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南アフリカ、近隣諸国と連携で観光促進、中小企業や女性の活躍も支援

  • 2017年6月28日

「I / WE DO TOURISM」で国民の意識を醸成
中小事業者支援の取り組みに手応え

会場は、ダーバンのインコシ・アルバート・ルツーリ・インターナショナル・コンベンション・センター

 南アフリカ共和国ダーバンで5月16日から18日の3日間、アフリカ大陸最大の観光見本市「INDABA2017」(インダバ)が開催された。アフリカ18ヶ国から1000以上の旅行関連業者が出展した今回のINDABAは、南アフリカにおける観光業の意義をあらためて問い直すと同時に、アフリカ大陸全体の観光の発展における同国の役割を強くアピールする場となった。今回、世界各国からバイヤー1449人、メディア692人が参加、来場者は7000人を数えている。


観光業の促進で雇用を創出
国民一人一人が観光親善大使に

開会式に登壇した南アフリカのズマ大統領

 国として観光を促進する姿勢を内外に広く示すこととなったのが、開会式へのジェイコブ・ズマ大統領の登壇だ。大統領は、2015年の南アフリカ経済に対する観光産業の貢献を3750億ランド(約3兆2000億円)とした上で、観光業を「国民の生活レベルを向上させる力がある重要な産業」と位置づけ、新たなマーケティングキャンペーンとして「WE DO TOURISM」の実施を発表した。

国を挙げ、また他のアフリカ諸国とも手を携える「WE DO TOURISM」と、個人個人の「I DO TOURISM」と、キャンペーンでは2つのロゴを併用する

 このキャンペーンは、国民一人ひとりに対し、自らが観光業に携わる意識を持ち、観光産業の発展に貢献するよう呼びかけるもの。今年4月に就任した観光大臣のトコジレ・カーサ氏も、これに呼応し、国民一人ひとりが観光親善大使の役割を果たすよう呼びかけるとともに、「現在、観光業に直接関わる人は70万人、間接的には150万人に上るが、キャンペーン推進により、2026年までにトータルで220万人まで増やしたい」と雇用創出への期待を示した。

 具体的な施策はまだ明らかにされておらず、現状では国内向けのスローガンの印象だが、国民の意識が変われば、海外から観光客を迎える環境の整備につながる。国内の失業率が、25%という高水準で推移していることを考えれば、世界の旅行者が懸念する治安改善も期待できるだろう。


インダバはより「アフリカ重視」へ

会期中に登場したINDABAの新しいブランディング

 今回のINDABAは、イベントの将来像を占う上でひとつの転換点だったともいえる。それが目に見える形で現れたのがINDABAのブランディングの変更だ。これまでINDABAはAfrica's Top Travel Showというキャッチコピーを伴って表現されていたが、今回、名称そのものがAfrica's Travel INDABAと、アフリカ全体を強く意識したものに変わった。この変更は、会期中に、エントランスを含め会場各所のバナーが変更されるというサプライズ演出で来場者にアピールする形となった。

 実際、南アフリカだけでなく、アフリカ大陸全体の観光を促進しようという考えは、今回、関係者の口から多く聞かれている。南アフリカ観光局(SAT)CEOのシサ・ンツォーナ氏は、メディア向けのセッションで「ズマ大統領自ら開会を宣言したことは、国として観光に力を入れていく姿勢を示す上で象徴的なことだった」と語るとともに、観光促進のためには「アフリカ諸国と競争するのではなく、手を携えて進んで行かなくてはならない」と連携の必要性を強調した。