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ナビタイムがJNTOとセミナー、誘客にビッグデータ活用

  • 2017年2月22日

(左から)大西氏、松山氏  ナビタイムジャパンはこのほど、日本政府観光局(JNTO)の後援のもと、都内で「自治体担当者向けインバウンド観光セミナー」を開催した。同社は2009年から外国人向けのサービスを実施しており、現在は訪日旅行者向けのナビゲーションアプリ「NAVITIME for Japan Travel」を英語、中国語繁体字・簡体字、韓国語で提供中。代表取締役社長の大西啓介氏はアプリから得たビッグデータを活用した外国人の動態の分析・把握と、地方誘客に向けたサービスについて紹介した。

 大西氏は本誌の取材に対しては「地方自治体には外国人に訴求できる観光資源を『発掘』する手段として、ビッグデータを活用するよう提案したい」と説明。一例として、プロモーションを実施する際にGPS測位データを活用することを提案し、「外国人の行動の変化をリアルタイムで見ることができるため、(プロモーションが)外国人に響いているかどうかがよく分かる」と主張した。

大西氏  例えば京都の伏見稲荷大社を訪れた訪日外国人旅行者のGPS測位データを分析すると、最寄り駅から神社の本殿まではアジア系の旅行者が多いが、欧米系の旅行者は本殿の奥にある稲荷山の山頂付近まで登る傾向があるという。大西氏はアジア系の旅行者は滞在時間の短くわかりやすい体験を求め、欧米系の旅行者は山登り自体を1つの体験と捉える傾向がにあると説明し、「同じ観光地でも国籍によって回遊行動に違いがある」と強調。「こうした分析が、いかにプロモーションをするか、ということにつながる」と話した。

 ナビタイムジャパンによれば、「NAVITIME for Japan Travel」のダウンロード数は累計80万件で、月間8万5000人以上がアプリを利用して日本国内を移動。利用者に対しては、初回起動時にデータ活用の可否、国籍や訪日回数、目的などを尋ねるアンケートを実施し、データの活用を許可した利用者についてのみGPS測位データを取得し、訪日外国人旅行者の行動分析に活用している。得られたデータを観光庁や国土交通省に提供した実績もあるという。

 大西氏はそのほか、日本在住の外国人のカメラマンや動画製作者などが、各地の観光資源をウェブサイトやソーシャルメディアなどを通じて海外に紹介する新たなプロジェクト「EXPLORE JAPAN PROJECT」を開始したことを紹介。すでに東北地方について取り組みを始めており、今後は地方自治体と協力して全国に拡大する考えを示した。


▽JNTO松山氏、データ活用に加えてWiFi環境整備も重視

松山氏  セミナーでは、JNTO理事長の松山良一氏もビッグデータを活用した分析の必要性を強調。「JNTOもプロモーションをビッグデータに基づいて実施するよう取り組んでいる」と説明するとともに、今後もナビタイムジャパンなどとの連携を強化する考えを示した。

 同氏は本誌の取材に応え、今後の課題として観光地などにおけるWiFi環境の整備について言及し、「WiFiがあれば旅行者がその場ですぐに情報を発信できる。無料で広告できる(に等しい)」と強調。無料のWiFiスポットは増加傾向にあるが、利用する際には拠点ごとにメールアドレスやパスワードなどを登録しなければならず使い勝手が悪いケースが多いため、現在は総務省などと手続きの簡素化に向けた取り組んでいることを伝えた。