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16年の訪日客は2400万人を予想、欧米豪に注目-JTBFシンポ

  • 2016年11月13日

シンポジウムの様子  日本交通公社(JTBF)は11月1日と2日に、26回目の「旅行動向シンポジウム」を開催した。1日には日本人や訪日外国人の旅行市場、観光産業の動きなどをテーマにJTBFの研究員がプレゼンテーションを実施。訪日旅行をテーマにしたディスカッションも開催した。ディスカッションで登壇したJTBF観光経済研究部長で主席研究員の塩谷英生氏は、2016年の訪日外国人旅行者が2400万人、消費額が3兆8000億円程度に上る見通しであることを説明。訪日旅行市場は円高などから成長が鈍化していることについて語った上で、「こうした『踊り場市場』では顕在化した需要をウォッチし、着実に施策を展開することが重要」と話した。

 ディスカッションでは、6名の研究員が訪日旅行における今後の注目市場や客層などを解説。観光経済研究部主任研究員の川口明子氏は、アクティビティなどの「娯楽サービス」に使う費用が多く、平均滞在日数も10日間以上と長いことから、欧米や豪州を注目すべき市場として挙げた。このほか、20代と30代の女性の訪日客が顕著に増加しており、特に韓国やタイで友人同士の旅行が増えていることも説明した。

 川口氏はそのほか、LCCの路線増に伴い、訪日外国人旅行者のFIT化が進んでいること、関東に集中していた訪日需要が北海道など地方にも分散していることについて語った。ただし、地方における需要は名古屋、京都、大阪、福岡などの大都市に集中しているため、「都市部と地方を比較した場合、構成比に大きな変化はない」という。

 また、同氏は訪日外国人の消費が、買い物などの「モノ消費」から、現地発着ツアーやアクティビティなどの「コト消費」に移行していることも説明。その上で、都市部ではFIT向けのサービスや観光素材の充実を、地方ではアジアからの団体客の取り込みを強化するよう提案した。

 観光経済研究部研究員の外山昌樹氏は、日本政策投資銀行とJTBFが共同で実施した「アジア欧米豪12地域・訪日外国人旅行者の意向調査」の結果について解説した。同調査は今年の6月から7月にかけて、インターネットで12ヶ国・地域に住む海外旅行経験者6198人を対象に実施したもの。外山氏は日本で体験したいことを尋ねた質問において「全体的に日本食や自然が上位に来た」と説明。アジアからの旅行者は温泉や紅葉、雪景色などの四季の体験が、欧米豪からの旅行者は史跡や建築物の見物が人気だったという。

 これらの結果を受けて塩谷氏は「(訪日外国人の消費を)地域への波及効果につなげるためには、食のブランド化が必要」と主張。また、同部研究員の菅野正洋氏は旅館の可能性について語った上で、食事と温泉の魅力を1泊2食付きのプランでアピールすることを提案した。宿泊施設に対しては、プランの販売増に向けてインターネットを積極的に活用することを呼びかけた。