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週間ランキング、1位はHIS「澤田社長」の「脱旅行会社」

[総評] 今週の1位は、エイチ・アイ・エス(HIS)の代表取締役社長に澤田秀雄氏が返り咲くことを含めて組織体制を刷新した記事で、このままいけばおそらく年間1位という圧倒的なアクセスが集まりました。ある程度は読んでいただけると考えていましたが、想像を大きく上回る数値に少々驚いています。

 とはいえ、HIS創業者であり旅行会社、特に「リアルエージェント」の分野では群を抜くサクセスストーリーを成し遂げられた澤田氏が、会長との兼任で再び社長に就かれたという事実は、間違いなくそれだけの注目を集めるに足る話題性を持っています。

 思うところも考えるところもたくさんあるわけですが、やはり「脱旅行会社」の決断に大きなインパクトを感じます。今回の組織変更は、ホテルや電力、ロボット、農業などを新たな収益源として育てつつ、旅行業の分野でもM&Aによって世界を席巻するようなオンラインのビジネスモデルを構築しようとするもので、それらが実現した時には我々が見慣れた今のHISの姿が矮小とすら言えるであろうほどの大変化となります。

 記事でも「総合旅行会社のビジネスモデルはもう古い」という澤田氏の発言を取り上げていますが、極端に書けばあのHISが「旅行会社、やめます」と宣言しているわけです。

 「もう古い」と断定されるそのビジネスに現在従事している社員の方々の心境はいかばかりかと想像してしまいますが、旅行業界誌の立場からしても、海外旅行の雄であるHISがこれまでの旅行業を否定するというのは、自分の家がブルドーザーかなにかで取り壊され、きれいに整地されていくのを為す術もなく見ているようなやるせなさを感じます。しかし、この暴力的なまでの大なたを振るえることが澤田氏の強みなのかもしれません。

 このやるせなさが何かに似ていると思って考えてみると、海外OTAや民泊などのビジネスの拡大を見るのに似ています。

 昨今のオンラインのビジネスは、業界外の力によってあっという間にマーケットを創出し、法的に多少問題があっても問題が顕在化した時にはすでにその規制の枠に押し込められるサイズを超えていて、枠自体を作り変えなければならないような流れが多いですが、既存の枠に合わせてビジネスをしていた側からすれば堪ったものではありません。

 しかし、これからの世の中ではそういった流れこそが定石になっていくかもしれず、既存の枠への拘泥は足かせにしかならない可能性もあります。そうであるとすれば、澤田氏の思い切った決断は新しい世界への対応策として決定的な意味を持つでしょう。

 個人的には、愚直に何かに向き合い続ける職人のような世界に居心地の良さを感じ、また人心の機微にこそ仕事の喜びを見出す人間で、「正直者が馬鹿を見る」という言葉がありますが、逆にそうなっても意地を張っていたい気もします。

 とはいえ、経営を預かるようになった身としては、従業員にまで霞を食べさせるような真似は許されません。澤田氏がこんな庶民的な葛藤を感じたことがあるのか分かりませんが、これからのHISがどのように変化していくか、色々な意味で興味深く感じるばかりです。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年10月26日12時~11月04日15時)
第1位
HISが経営体制再編、澤田氏が会長兼社長に、「攻めのガバナンス」へ(16/10/28)
HIS、新体制で海外展開とオンライン強化-「旅行以外」も(16/10/30)
HIS、ベトナムに法人営業専門店、ローカル需要の開拓も(16/11/01)
HIS、ホテル専業の子会社を11月に-HS損保も子会社化(16/10/30)

第2位
関空、16年冬の国際線は週1131便で過去最高、LCC率34.5%に(16/10/30)

第3位
スペシャリスト・インタビュー:JTBロイヤルスタッフ 久田千絵さん(16/11/01)

第4位
羽田/米国線、昼間便の運航開始-全日空とデルタが式典(16/10/31)

第5位
関空、LCC新タミは1月末に供用開始、最新保安システム導入(16/10/31)

第6位
関空、16年上期の国際線旅客は13.1%増-9月は8.8%増(16/11/01)

第7位
ANAHD、2Qは営利・経利が過去最高、売上高は減(16/10/31)

第8位
ターキッシュ、関空線を運休、テロやクーデターで需要減(16/10/31)

第9位
ANAグ、新会社「ANA X」を設立、FFP事業など移管(16/10/31)

第10位
観光庁、新たな基本計画の策定に着手、五輪見据え4ヶ年で(16/10/27)