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前駐フランス大使が講演、現在の治安状況を解説-邦人安全協

  • 2016年9月20日

▽訪問は「フランス人励ます」-安全確保し交流推進へ

講演会の様子  鈴木氏は、在任中には在仏日本商工会議所や日本人学校などの緊急連絡体制を強化したことについて述べ、「ある程度の危機感は持ってもらえるようになった。安否確認も迅速におこなえるようになった」と説明。この日の参加者には、外務省が運営する情報提供サービス「たびレジ」への登録や、長期滞在の際の在留届の提出などにより、情報収集活動を強化することを推奨した。また、現在のフランス政府は政治家ではなくテロ対策などの専門家を前面に押し出し、国民への迅速かつ正確な情報提供に努めていることを紹介。「注意して情報を収集してみては」と呼びかけた。

 今後の日本人訪問者数回復のカギを握ると見られる非常事態宣言の解除については、「政府がテロ容疑者としてリストに登録した危険人物の数が“増えない”ことが重要」と説明。今後は「国内については大幅には増えないと思うが、シリアなどに渡ったフランス国籍保有者がいずれ帰国する。その時にどう押さえ込むか」などが課題になるとし、「数ヶ月でも半年でも何事もない時期が続き、監視体制に自信が持てれば、宣言の解除に向けた大きな要素となる」との見方を示した。テロ予備軍のヨーロッパへの流入阻止については、プライバシー保護の観点から壁は高いものの、航空便の搭乗者情報をEU加盟国の関係当局で共有することなどが可能になれば「かなりの抑止力につながる」と解説。加盟国のさらなる連携に期待した。

 講演終了後に本誌の取材に応えた鈴木氏は、今後の訪仏日本人旅行者数の回復については「日本人は安全の問題に敏感で、厳しいとは思う」とコメント。その上で「行くか行かないかの判断は難しいが、それでもフランスが好きで興味があるという人は、充分に注意して行かれたら良いと思う。そのことがフランス人にとっても励ましになる」と語った。そのほか、現時点ではビジネスの中心地はテロの標的になっていないことなどを説明し「欧米からの業務目的の訪問はそれほど減少していない。フランスは戦争状態にあるわけではない」とも付け加えた。

会長の小野氏  この日はそのほか、冒頭で海外邦人安全協会会長の小野正昭氏が挨拶。シャルリー・エブド社襲撃事件から現在までの動向について振り返り、「大好きな国がこんなことになり非常に残念。邦人の訪問者もかなり減っている」と遺憾の意を示した。一方で「そこで『行かない方がいい』と言うのではなく、安全を確保して日仏交流を進めるのが我々の務め」とも語り、参加者には冷静かつ前向きな判断を呼びかけた。

 同協会は、海外旅行者や海外に進出する日本企業などの安全確保に向けて、定期的にセミナーや講演会などを実施。今年度は「リオ五輪を控えた現地の治安情勢とジカウイルスなどの感染症」「フィリピン治安情勢」 などをテーマに講演会を開催している。役員は大使経験者などからなり、理事には日本旅行業協会(JATA)事務局長の越智良典氏なども名を連ねる。