現地レポート:トロントで鉄道の旅、新たなオプショナル素材に

  • 2015年10月6日

蒸気機関車から空港連絡鉄道まで
列車と駅を楽しむ

「ナンバーナイン」のデモンストレーション運行を間近で撮影  東京から毎日2便が飛んでいるトロントは、ナイアガラの滝や秋のメイプル街道などカナダ東部観光への拠点として多くの日本人観光客が訪れる都市だ。しかし、単なるゲートウェイとして通り過ぎてしまうのはもったいない。多彩な都市観光素材が揃うほか、SIT的なアトラクションでも多くの観光客を惹きつけている。LGBTの祭典「プライド」やモーターレースの「ホンダインディー」などは日本人ファンも多い。そのなかで今回は、鉄道をテーマにトロントを旅してみた。


蒸気機関車「ナンバーナイン」に乗車
迫力の姿を間近で撮影

観光客にも大人気の「ナンバーナイン」  トロントから西に車で2時間ほど、約120キロメートルの位置にあるセント・ジェイコブス。この小さな村では、村おこしに蒸気機関車が一役買っている。その名は「エセックス・ターミナル・レイルウェイNo.9」。1923年製のカナダ国産蒸気機関車で「ナンバーナイン」の愛称で親しまれている。

 運行しているのは「ウォータールー・セントラル・レイルウェイ」。2007年に立ち上げられ、10年からサービスを開始した。運営しているのは地元のボランティアで、現在は10人から15人が携わっているという。休日には、鉄道やオンタリオの歴史に関心のある高校生も参加する。

機関車や客車の修理・整備がおこなわれている工房 驚くべきは、ボランティアが運行だけでなく、すでに退役した年代物の蒸気機関車や客車の修復や整備までおこなうことだ。ナンバーナインも約5万時間をかけて復活させたという。車庫には修復中のディーゼル車や客車も並ぶ。

 実際に体験乗車してみた。運行コースは修理工房のあるセント・ジェイコブスとエルマイラの往復。20キロメートルほどの距離を蒸気をあげながらゆっくりと走る。コネストーゴ川の鉄橋を渡ると車窓にはオンタリオらしいトウモロコシ畑。踏切にさしかかると、汽笛が響き、その音に合わせるように地元の人たちが手を振ってくれた。

セント・ジェイコブは、昔のままの生活をおくるキリスト教徒「メノナイト」の町でもある 往路ではナンバーナインは頭を客車に連結し、後ろ向きに走る。エルマイラに到着すると、今度は最後尾だった客車に連結。復路では頭を先頭にして通常の連結の姿でセント・ジェイコブスに戻る。

 この蒸気機関車の旅の楽しみは、ただ乗車して車窓を楽しむだけではない。復路の途中には、トウモロコシ畑で下車し、線路脇からナンバーナインのデモンストレーションランを間近に見ることができるのも醍醐味。青空にあがる蒸気、力強く回転する大きな車輪、どこかノスタルジックな汽笛。今ではなかなか見ることのできない重厚な雄姿には、鉄道ファンならずとも心動かされるはずだ。

 今回乗車したのは、祝日となっている9月7日のレイバー・デイ。このほか、10月12日のサンクスギビング・デイにも運行される予定で、この日の運行については、エイチ・アイ・エス・カナダが現地発オプショナルツアーとして商品化した。残念ながら、16年のナンバーナインの運行スケジュールはまだ決まっていないが、チャーターも可能。ボランティアによる作業のため延期も大いにありえるが、今年中には古い食堂車の修復も完了する予定で、「将来的には、その車両を使ったダイニングサービスもできるのではないか」とあるボランティアは語る。

 なお、ナンバーナインではなくレトロディーゼル車の牽引による運行は定期便化されているため、トロントからのオプショナルツアーでも利用できそうだ。