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アクセスランキング、1位はCHINTAIトラベル自主廃業

[総評] 今週はCHINTAIトラベルサービスが8月31日をもって自主廃業したニュースが1位となりました。1985年創業というと今年で30周年であったことになりますが、実はトラベルビジョンもちょうど今年で15周年、親会社も25周年を迎えたところで、節目の年での営業終了という決断には感傷的な印象を抱いてしまいます。

 企業にとっての30年が短いのか長いのか分かりませんが、人にとってはいうまでもないことで、人生80年とすれば実に4割近い時間にあたります。例えば創業時に新卒で入社した方がいたとすれば今年で52歳を迎えていらっしゃることとなり、あるいは直近で勤務された方の中には創業時に生まれていなかった方もいらっしゃったでしょう。

 部下を預かり経営に携わるようになって感じるのは、このように多数の方々の人生に関わることの難しさで、逆に単なるビジネスとして割り切って考えられるようになればそれで良いかというとそうとも感じられません。

 また、別の視点としてこの30年間の旅行業界についても考えてしまいます。1985年というと、海外旅行でいえばまだ出国者数が500万人にも満たない水準であったとのことですが、その10年後には1500万人超にまで急増します。一方では1990年代前半からバブル崩壊やテロ、SARSなど様々な外的要因に翻弄されつつコミッション削減などを経て現在にいたるわけで、創業時からの事業環境の変化は想像を超えるレベルです。

 エイブル&パートナーズも「経営環境の悪化」を主因としていますが、このジェットコースターのような変化の中では廃業もやむなし、企業の判断として妥当なのかもしれません。

 日本旅行業協会(JATA)によると、旅行業者の数は1975年に4413社であったところからCHINTAIトラベルサービスが創業した1985年には7731社、1995年にはピークとなる1万2921社にまで膨れ上がっており、先ほどの出国者数の推移と並べるとそれぞれの相関性を感じます。

 そして旅行業者数はその後少しずつ数を減らして2014年には合計9978社となり、登録区分の変更があるため比較できないものの1989年以来初めて1万社を割り込みました。この傾向をラディカルに考えれば、雨後の筍のように増えて過剰となっていた旅行サービスの供給量が適切な規模に収縮していく過程といえるかもしれません。供給が少なくなれば価格面などでの不毛な競争は減る可能性があり、多少は環境が改善すると期待できます。

 なお、旅行業界誌で働く身として、旅行会社の事業停止はお伝えするのが残念でならない話題で、それが業界全体では環境の改善に繋がるかもしれない、という考えはなかなか心情的に受け入れがたいところがあります。一方で、旅行業界誌は旅行業界が健全に存続し成長しない限り成り立たないメディアであり、そもそも競争とはそういうもの、という冷徹さも求められます。

 先ほどの「人」に対する悩みと共通しますが、ヒューマニスティックな側面と感情によらない合理的な側面との両立は、個人的に非常に悩ましい課題となっています。おそらくそう簡単にジレンマが解消することはないか、あるいはそもそも解消するものではないのかもしれませんが、どのように折り合いをつけるべきなのか、今後も様々なお立場の方々に教えを請うていきたいと考えています。(松本)

▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2015年8月第5週、9月第1週:8月30日0時~9月4日18時)
第1位
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第6位
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第7位
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第8位
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第9位
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第10位
スクート、16年の関空線デイリー化に意欲-新千歳就航も検討(15/09/03)