通訳案内士団体など、制度の改正提案-第2回制度のあり方検討会で

  • 2015年1月22日

 観光庁は1月20日、第2回通訳案内士のあり方に関する検討会を開催した。第2回は通訳案内士団体やボランティアガイド団体が、通訳案内士制度の改正案や通訳案内士の活用方法などについて発表をおこなった。

 通訳案内士団体からは日本観光通訳協会(JGA)、通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会(GICSS研究会)、全日本韓国語通訳案内士協会(KGO)が参加。各団体からは、第1回検討会で挙げられた通訳案内士不足の問題について、不足はトップシーズン中の特定地域で、一定の技術レベル以上であるとの認識が示された。

 JGA会長の萩村昌代氏によると、韓国、台湾、中国、香港以外の訪日外国人のうち、約半数の180万人がガイドを必要としており、1団体が平均20人と仮定すると1ヶ月あたり約8000団体の需要があると説明。現在通訳案内士は1万7736人おり、1名が月2本の仕事をすると4000人程度で足りる計算とした。GICSS研究会理事長のランデル洋子氏も、地域によってはガイドが余っており、経験を積んでスキルアップをめざそうとしても仕事が不足しているケースがあると解説。通訳案内士の活用を呼びかけた。

 各団体からは国に対し、無資格ガイドの取り締まり強化を求める声が挙がった。KGO代表で中国語通訳案内士会にも所属する高田直志氏は、韓国・中国発の無資格者による案内が定着していると問題を指摘。韓国は通訳案内士の資格保持者もおり、ツアー内容に対するクレームは少ないが、中国は誤った情報提供や詐欺まがいのツアーがおこなわれているケースがあると報告。その上で「少なくとも公的団体の交流事業や海外からの修学旅行など、公的性格を持つツアーは通訳案内士の配属を徹底してほしい」と要望した。

 このほか、各団体からは旅行会社に対し、新人や若手通訳案内士をベテランに同行させるといったインターンシップ制度や、訪日客向けバスツアーでの非英語圏の通訳案内士の活用などが提案された。

 また、通訳案内士制度については、各団体から試験問題の充実と資格の更新などに関する提言が出された。試験問題については、旅行業の知識などを問う設問がないことから、国内の旅程管理主任者資格に共通する質問を含めることを提案。試験科目の一部免除制度については、センター試験や語学検定などは資格の有効期限がないことや、試験の目的が異なることから免除対象から外すべきとの提言もなされた。

 また、荻村氏は試験合格後の旅程管理主任者資格取得の義務化を提案。理由として、通訳案内士は外国語での説明はもとより「時間通り安全に旅行者を移動させる旅程管理能力が一番求められる」点を挙げ、義務化することで通訳案内士の仕事のより深い理解と質の確保につながるとした。このほか、現在通訳案内士制度で除外されている言語への対応を求める声も上がった。

 さらに、資格自体も更新制にし、資格取得後に実地研修を必須化すること、新人研修や中堅者向けのテーマ別研修の実施、通訳案内士の格付けや就業区分、専門性区分を設けて登録証に表示することなど、通訳案内士自身の質の担保・向上に関する提案も多く出された。加えて通訳案内士自身の取り組みとして、通訳案内士自らが検索システムなどを有効活用し、営業力を持って仕事を自ら獲得していく能力を磨いていく必要も指摘された。

 また、ボランティアガイド団体では「東京SGGクラブ」が発表。善意通訳ボランティア活動と通訳案内士活動の棲み分けを提案した。同クラブ会長の石関文昭氏は、ボランティア活動は地域を限定したもので、個人旅行客をターゲットに地域密着型を活かし案内ができるとメリットを紹介。一方、通訳案内士は全国ベースで個人富裕層や団体観光客に対し、高度なスキルで全国をカバーすることができると説明。「二層構造にして、需要、質量ともにバランスよく展開すればよいのでは」と提案した。