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カナダ、送客増への3つの期待-ランデブー・カナダ取材から

  • 2012年7月10日

 今年の「ランデブー・カナダ(RVC)2012」で焦点となったのは、カナダ観光局(CTC)が昨年から開始した体験プログラム「シグネチャー・エクスペリエンス・コレクション(SEC)」。カナダならではの体験と感動を伝えるSECでの新展開に、旅行会社からも期待の声があがった。また、今年はエア・カナダ(AC)の成田/カルガリー線の増便や通年化に加え、日本/アメリカ路線の新規就航が増加したことで経由便の利用も可能だ。供給量が改善され、日本市場の拡大に期待がかかる一方、送客への課題もある。今年のカナダ旅行のトレンドを、RVCで探った。


SECで新しいカナダを打ち出し

CTC日本地区代表のモリーン・ライリー氏  初日に開催されたセッションで、CTC日本地区代表のモリーン・ライリー氏はSECを「単なる体験プログラムではなく、体験を通じて得る感動、感情を創りだすもの」であると強調。旅行者の心に訴える体験プログラムとして、カナダ本来の魅力を伝えるとともにカナダ旅行の意欲をかきたてるのが、SECならではのポイントだ。

SECのアピールの一環として、CTCではツアーオペレーターのismと協力してSECの紹介サイトを作成  例えば、ナイアガラの滝では、触れるほどの距離まで近づいて、滝のパワーを感じることができる体験とそれに伴う感動を伝える。モリーン氏は「単なる観光地としてではなく、その地での体験と体験を通じて得られる感動を、ストーリーとして紹介してほしい」と活用の仕方を説明した。今後はメディアを活用して消費者にアピールするとともに、旅行会社に商品造成を呼びかけていく考え。特に、実際の送客につなげるためには「旅行会社との協力が不可欠」といい切る。

ベックス・ケンネル・オーロラツアーは雑誌「ブルータス」と協力し、SECに認定された犬ぞりでのオーロラ鑑賞ツアーを紙面で紹介した  SECは現在163種類あるが、日本では現在45種類を紹介。このうち30種類以上は旅行会社の既存のパッケージに組み込まれている。しかし、モリーン氏は「訪問先としてただ紹介するだけ」にとどまっていることも多いといい、「目的通りに使われなければ、旅行会社へのサポートも難しくなる」と、旅行会社に対して感動を伝える大切さを強調した。


SECを積極活用、商品の多様化へ

PEI州政府観光局アドバタイジング&パブリシティ・マネージャーのロバート・ファーガソン氏  各観光局はSECの活用に積極的だ。プリンス・エドワード島(PEI)州政府観光局アドバタイジング&パブリシティ・マネージャーのロバート・ファーガソン氏は、SECを「島で過ごすのに最適な体験素材」とし、船の上でとれたてのオイスターを味わえるSECなどを用意。「PEI旅行の最大の目的は赤毛のアンだが、(SECで)旅行者ができる体験の幅を広げていきたい」と意欲を示した。

今年は太陽の活動周期からオーロラの当たり年  ノースウェスト・テリトリーズ(NWT)観光局やユーコン準州観光局も、オーロラを絡めたSECを積極的に打ち出している。2011年、12年はオーロラ鑑賞の「当たり年」であるため、NWTではイエローナイフ、ユーコンではホワイトホースでのオーロラ鑑賞をアピール。11年はNWT観光局で前年比30%から50%増、ユーコン準州観光局で75%増と増加しており、今年も訪問者の増加に期待を示した。

CTCではタッチパネルスクリーンで地図や動画とともにSECを紹介する取り組みも実施。CTC副社長のチャールズ・マッキー氏によると、現在は英語版のみ。将来的には日本での活用も検討中  一方、旅行会社側ではSECを商品の多様化のチャンスと見る動きが出てきている。RVCに参加したある旅行会社は、「SECには我々が興味を示す内容がそろっている」と、商品に組み込む考え。また、カナダのツアーは「決まりきったルートでマンネリ化しているため、日本ではあまり知られていない素材や、新しい切り口の商品造成が必要」との考えから、SECの活用をはかる会社も見られた。その反面、SECはすべてが日本市場に合致すると限らないとし、慎重に見極める必要があるという意見もあった。期待の高いSECだが、活用の仕方は、今後の課題といえるだろう。