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トップインタビュー:アマデウス・アジア太平洋地区社長のブレット氏

アルテア、ワンクリックのメリット強調、全日空に続き日本航空への働きかけも


 全日空(NH)が旅客管理システム「アルテア」の導入を決めるなど、日本でのビジネスをさらに拡大させているアマデウス。業務渡航系の旅行会社や企業向けに、出張者の所在地と安否を容易に確認できるツール「アマデウス・ワンクリック」の提供も開始した。アマデウス・アジア太平洋地区社長デービッド・ブレット氏に、同社のシステムのメリット、大震災からの復興が進む日本市場の展望などを聞いた。



-直近のビジネス状況について教えてください


デービッド・ブレット氏(以下、敬称略) 全体的には堅調にビジネスを展開している。新しいプロダクト「ワンクリック」を投入するなどして、新たな顧客も獲得できている。大韓航空(KE)やNHが新たにアルテア導入を決めたのも、アマデウスが評価されている証だと思う。


 市場の動向を見ると、グローバルには中東の民主化運動が心配だ。アジアでもフィリピンやインドネシアから中東への出稼ぎ労働者が減少する兆しはある。日本市場については、震災後、イン・アウトだけでなく国内旅行も減少が見られたが、回復の兆しは見えていると思う。旅行は生活と切り離せない。日本は貿易国である以上、出張は避けて通れないはずだ。


 その出張のリスク管理を手助けするのがワンクリックだ。これを使ってもらえれば、企業は社員の出張の安全確認が可能になる。世界中どこかでかならず問題は起きる。出張にともなうリスクを確実にコントロールできるかが企業にとって大切だろう。アマデウスとしてはそれをサポートしていきたい。



-日本市場の回復について、具体的にどういった兆しがうかがえますか




ブレット それはブッキングの数字にも表れている。また、航空会社からは、震災後中断されていたフライトを戻しているとも聞いている。天災が起きれば、旅行者数は減少するのは仕方がない。レジャーの場合は旅行を中止するが、出張の場合は中止ではなく延期するだけだ。日本でも復興が進み、出張需要の回復は加速するだろう。


 アルテアは災害時にも大きなメリットを発揮すると思う。航空会社の間でひとつのPNRを共有することができ、フライトがキャンセルされた場合、ほかの航空会社への振替もスムーズにできる。ほかのGDSでは無理なことだ。



-2011年通年の業績はどのように予測していますか


ブレット 具体的なデータがないので、まだ詳しくは言えない。現在の市況を見てみると、座席供給量は世界的に前年を若干下回るだろう。日本市場については、出張の回復は早いが、レジャーはもう少し時間がかかると見ている。しかし、SARSのときも一時は落ち込んだが、しばらくするとその落ち込みを上回る需要が戻ってきた。最終的には2011年もいい年になるのではないかと期待している。



-NHが日系航空会社としてはじめてアルテアの導入を決めました




ブレット NHに選んでもらえたことはとても光栄なことだ。アルテアはスターアライアンスの共通プラットフォームであり、PNRの共有も可能になるので、NHにとっても有益なソリューションになるだろう。グローバルな市場では、専門家が構築した柔軟なITソリューションを使う方が効率的だという認識が航空会社の間に広まってきたと思う。現在、世界で112社がアルテアを導入済み、あるいは契約を終えている事実が、それを示しているのではないか。我々は顧客の視点を大切にしながらプロダクトを作っている。収益性の面からも航空会社の役に立てるシステムだと思う。



-ほかの日系航空会社が導入する可能性はいかがでしょうか


ブレット まだ導入していないJLをはじめ、大手の航空会社への働きかけは続けていく考えだ。グローバルなディストリビューションやPNRの共有などがもたらすメリットは、NH同様にワンワールドメンバーのJLにも有益なはず。彼らの業務にもフィットできると信じている。


 JLとNHとは競合関係にあるが、それはアルテア導入とは関係のないことだ。欧州では、エールフランス(AF)、ルフトハンザ(LH)、スカンジナビア航空(SK)、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)など競合関係にあるエアラインがアルテアを利用している。航空会社が航空機を購入するとき、最高の機材を選ぶ。ITソリューションもそれと同じことだと思う。



-NHの場合、インフィニ・トラベル・インフォメーションで流通機能を残す計画で、ほかのアルテア導入企業とは事情が異なると思います。そのなかでも、アルテアの利点は十分にいかされるのでしょうか



ブレット グローバルなディストリビューションにおいても、スターアライアンスのなかでも、NHはアルテアの利点を享受できる。国内での販売については、NHは市場の特性にともなった戦略を構築しているのだろう。我々としては、まずは2つのテクノロジーのプラットフォームをきちんとつなげていくことが大切になってくると思う。


 NHのように、レガシーCRSとアルテアを供用している航空会社はない。KEも完全にアルテアに移行する。とはいえ、グローバル以外でどのテクノロジーを使うかは、NHの判断だ。



ありがとうございました