旅行業・観光業DX・IT化支援サービス
旅行業・観光業DX・IT化支援サービス

トップインタビュー:中国南方航空日本支社長兼東京支店長の呉国翔氏

中国南方航空日本支社長兼東京支店長の呉国翔氏

国際線を強化しネットワーク拡大へ
日本市場は認知の向上から、羽田就航もめざす


 中国南方航空(CZ)は2010年から海外市場への取り組みを強化し、欧米やオセアニアなどへの路線網を拡大している。2011年1月に日本支社長兼東京支店長に就任した呉国翔氏は、日本でも羽田を含めて新路線の開設をめざすと意気込む。東日本大震災の影響も懸念されるが、ブランドの認知向上を進めて多方面への需要を取り込みたいという呉氏に、今後の路線展開や販売の戦略を聞いた。(聞き手:本誌編集長 松本裕一 構成:栗本奈央子)
                                          
                                     
▽関連記事
中国南方航空、国際線ネットワーク拡大へ−乗り継ぎ需要強化はかる(2011/04/26)
中国南方航空、既存路線延伸で需要拡大はかる−富山、広島、福岡空港で(2011/02/24)


−現在の国際線展開の基本戦略をお聞かせください

呉国翔氏(以下、敬称略) 2010年からCZは航空路線の展開方針を変更した。これまでは中国国内線の乗り継ぎを軸に成長してきたが、今後は5年から10年をかけて国際線を拡大していく計画だ。現在、国内線の収益は7割で、国際線は3割。これを5年後には5対5にしたい。国同士の航空交渉や空港のスロットなど、各方面で課題があるが、一歩ずつ進んでいきたい。

 国際展開に目を向けた理由の一つは、中国で新幹線など飛行機の代替交通手段が多く出てきていること。近い将来、交通手段がさらに発達するなか生き残っていける会社は、LCCと多くのハブ空港を保持しているネットワークキャリアの2種類と考えている。世界を見渡す限り、競争に勝ち残っている会社はその2種類で、これは全世界的な流れだろう。

 現在、アジアではシンガポール、ソウル、成田など、乗り継ぎがスムーズにできる国際空港が増加している。乗り継ぎが便利な空港こそ、お客様を勝ち取ることができる。そうした流れを中国でも取り入れていきたいと考えている。CZでは広州と北京を拠点とし、ネットワークキャリアとして成長していく。


−路線網拡大の具体的な計画は

 CZでは、直行便と経由便は別の市場、別の手段だと考えている。ヨーロッパ線など長距離路線の場合、中国人は3割程度。乗り継ぎによって日本を含めて世界各国からお客様が広州を経由し、さまざまな国や地域に行くようになってきている。ヨーロッパ/オーストラリア間などでは、多くのお客様が身体的な負担を減らすため、直行便ではなく経由便を選択している。

 このような中で、お客様に多くの選択肢を与えることで発展していきたい。現在は、まずはオーストラリアやニュージーランドなどの路線を充実させているところだ。これらの路線の便数は、2010年からの1年間で4倍まで増加した。例えばニュージーランド線では、2011年4月8日から広州/オークランド線に週3便で新規就航した。

 また、6月には広州/バンクーバー線を週3便で運航開始するほか、広州/アムステルダム線もダブルデイリー化する予定だ。2011年末には広州/ロンドン線も就航を予定している。また、今年後半にはエアバスA380型機を導入する計画で、これによる北京/ロンドン、パリ、ニューヨーク線についても検討中だ。


−1月に就任されたばかりですが、日本市場の位置づけをお聞かせください

 日本市場はCZにとって重要な市場の一つだ。現在、中国の航空業界では日本市場が最も大きく、国際線の収入の4分の1を占めている。CZの海外就航都市は約30都市だが、そのうちの9都市が日本。CZが日本を拠点にして約10年だが、日本路線についてほぼ黒字で推移している。本社でも日本市場をとても重視しており、潜在需要はさらに拡大できると考えている。

 CZの強みは広州からの路線網。カンボジアのシェムリアップやバングラデシュのダッカなど他社便が少ない路線もあり、他社と比べて有利だと考えている。また、ヨーロッパ路線の増便も進めており、利便性を向上している。さらに、運賃も武器になるだろう。


−東日本大震災の影響はありますか

 震災の影響は大きい。旅行会社や航空会社に対し、一時的ではあるが致命的な影響がでている。訪日客が90%減となっているというデータもあり、日本/中国線の乗客が大きく減少している。ただ、ビジネス客や、中国や日本に家族がいるお客様もおり、幸いながらこういった需要があるため、路線は運航し続けている。こうした事態のときこそ、お客様に対し安定して便を提供していきたいと考えている。ただし、仙台/長春線は運休しており、運航機材についても小型化する場合はある。

 とはいえ、こうした状況下ではあるが、今後も新路線の検討は続けていく。CZとしては、羽田空港への乗り入れを強く希望している。その意味で、現在中断している日中間の航空交渉の進展に期待したい。また、成田空港については既存の瀋陽、大連、長春線のデイリー化など、中国東北地方の路線の強化を考えている。成田/ハルビン線などの新規路線や、路線の延伸による長沙、武官など中国内陸部への乗り入れも検討中だ。


−在任中の抱負や目標をお教えください

 任期中に日本市場での収益を2割ほど拡大したい。新路線の開拓もめざす。例えば、チャーター便の形態で羽田への乗り入れを計画しており、現在協議を進めているところだ。


 また、日本でCZブランドの認知度が低いことが一番の課題と考えており、最優先で取り組んでいく。例えば、CZは国際航空運輸協会(IATA)が2010年に発表した、2009年の世界の航空会社旅客輸送量ランキングで第3位となったが、日本ではあまり知られていない。広告などにより認知度を高めるとともに、路線網を含めてお客様に提供するサービスを向上し、実際に利用していただきブランドを理解してもらうことで徐々に認知度を上げていきたい。


−ありがとうございました