ATE2011開幕、「日本市場の回復信じる」−震災影響、通年は1割程度減少か

(シドニー発:本誌 松本裕一) 4月2日、シドニーでトラベルトレードショー「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)2011」が開幕した。ATEはオーストラリアへのインバウンド拡大を目的としたもので、日本からは、東北地方太平洋沖地震の影響でキャンセルもあったもののメディアを含む27名が参加(うち現地参加6名)。出展者側は約600社の約1700名が集まり、活発な商談を始めている。

 震災の影響について、オーストラリア政府観光局(TA)本局局長のアンドリュー・マカボイ氏は「短期的には25%から30%の(日本人旅行者の)減少を見込んでいる」と説明。TA日本局長の堀和典氏も「一昨年レベルには落ち込むだろう」と見る。ただし、教育旅行など影響が少ない分野もあるため、「夏以降は勢い良く回復すると信じている」(マカボイ氏)といい、通年では10%から15%程度の減少を見込み、2012年には再び成長したいと期待を示した。

 また、初日に取材に応じた州や地域の観光局では、キャンセルなどの影響はばらつきがあるものの、「本当に来たいと思っている消費者は来る」との展望は一致。パワースポットやスポーツ、イベントなどSITを強く打ち出すことで1人でも多くの旅行者を誘致したい考えだ。また、影響の少ない教育旅行も引き続き強化する。具体的な計画を明かす観光局はなかったものの、夏の需要を見すえたリカバリーキャンペーンを5月以降に検討するところも多く見られた。

 バイヤーとして参加した旅行会社からは、「最初は日本市場への不安を口にするセラーが多いが、説明すれば分かってもらえ、前向きに商談ができている」といった声が多い。また、セラーの中には、日本が地震で壊滅的な打撃を受け、「誰も来れないのではないか」といった憶測があったといい、27名が参加したこと自体が日本市場に対する懸念の払拭に繋がっているとの指摘もあった。


▽現地側から励ましの声、チャリティイベントも

 日本市場では、震災により諸外国における日本市場への期待が低下するのではないかとの懸念もあったものの、ATEの会場からは温かい励ましや継続的な注力を誓う声が多く聞かれる。オーストラリア政府観光大臣のマーティン・ファーガソン氏は「今は被災者や被災地の救援が最優先課題。しかし、(日本市場がオーストラリアにとって重要であるように)歴史的に、特に最近はオーストラリアからの訪日旅行者も日本経済にとって重要になっている」と指摘した上で、「状況の改善と時を同じくして我々旅行産業がビジネスを再開することが、両国にとって望ましい」とコメント。

 また、マカボイ氏も、「日本は、観光や貿易の観点から重要な国だが、日本人はオーストラリアにとって友人でもある」とし、「TAとオーストラリアの観光産業は、被災者の皆様にお悔やみをお伝えするとともに、ご多幸をお祈りする」と言及。その上で、「被害の程度は異なるが、オセアニアでもクイーンズランド州のサイクロンやクイーンズランドの地震の被害を受けており、被災者の皆様のお気持ちを完全に理解することはできないと思うが、私たちの心は皆様とともにある」と語った。

 このほか、セラーによると各地でチャリティイベントが計画されており、例えばシドニーでは、日本人シェフが中心となって4月10日にチャリティディナーとオークションが開催されるほか、ケアンズでは、エスプラネードのフォガティパークでチャリティイベント「Japan Day for Hope」が企画されているという。


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