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事業承継の成功例を知る:大阪市・第3種旅行業のジータック

自社社員によるスムーズな承継に成功
飛行機クラブ仲間から仕事仲間、そして後継者へ

(左から)河村氏、原氏  経営者の高齢化が進み、今後10年以内に多くが事業承継のタイミングを迎えるという日本の中小企業。旅行会社もその例外ではなく、廃業や事業売却などを避けたい経営者にとっては悩ましい問題となっているが、その一方で次の世代が顧客やノウハウを円滑に受け継ぎ、さらなる事業展開に向けて踏み出したケースも多数存在する。本誌では、先月から開始した「FSAトップに聞く」に続く新たなシリーズとして、事業承継に成功した旅行会社の新旧代表者のインタビュー記事を不定期で掲載する。

 第1回は、1年半前に自社社員によるスムーズな事業承継に成功した、業務渡航手配などを手がける大阪市の第3種旅行業者のジータックを紹介する。創業者で現在は取締役会長を務める原輝生氏と、代表取締役社長の河村直樹氏に話を聞いた。(聞き手:トラベルビジョン代表取締役会長 岡田直樹)

-最初に、主な業務内容や事業規模などについて教えてください

原輝生氏(以下敬称略) 1996年に創業して以来、「グッド・ツアー」の名称で主に業務渡航の手配をおこなっており、航空系には強いと自負している。現在の社員は役員を含めて8名で、クライアントは一部上場の製造業から食品の小売り業まで幅広く、土地柄もありアパレルなどの繊維業も多い。最近では海外実習生の渡航手配も増え始めた。

-原会長は現在71歳ですが、ジータックを創立した経緯と、事業承継を考え始めた時期について教えてください

 もともと私は、ある大手企業で旅行部門を任されていたが「いつか独立したい」と考えていて、96年に47歳で創業に踏み切った。10年以上走り続けた後、60歳過ぎから事業承継を考えるようになり、「65歳までには引退したい」と思っていた。

 周囲には同じく事業承継の悩みを抱え、結果的に廃業してしまった会社も多い。しかしこれまで会社を育てていただいたお客様がいるのに、後継者がいないからといって廃業しては、お客様を裏切ることになる。そう考えて事業承継の道を模索した。

-河村社長を後継者として選んだ理由は

 事業承継を考え始めた頃には「合併」という考えも頭を過ったし、外部の人材にも目を向けた。しかし、ふと社内に目を向けたら、そこに次の社長が「おったやん」というのが正直なところだ。

 そもそも河村社長は、ジータックに入社する前から私が会長を務める飛行機のファンクラブ「エアライナークラブ」のメンバーだった。飛行機に乗ったり、グッズを集めたりする社会人向けのクラブだが、彼は非常に熱心な飛行機ファンだったので、今から20年ほど前に、大学生だったが特別に入会を許可した。

 河村社長は古くからのクラブ仲間であるだけでなく、その後にジータックに入社して一緒に働いてくれている仕事仲間でもある。人となりについても良くわかっているので、後継者には相応しい人材だと確信することができた。

-河村社長がジータックに入社されてから、事業承継を決意されるまでについて教えてください

河村直樹氏(以下敬称略) 大学卒業後は大手旅行会社に入社しましたが、その後、機会があり24歳だった2004年にジータックに移りました。会長から事業承継の話があったのは、創立20周年を迎えた16年頃です。仕入先の方々を招いて開いた記念パーティーで、皆さんの協力があって今のジータックがあることを改めて実感したことで、「自分が事業を受け継いでみよう」と思うことができました。引き継ぎは時間をかけて少しずつおこない、正式に社長に就任したのは17年7月のことです。