「FSA」トップに聞く:アートツーリスト代表取締役の上原龍男氏

京都を拠点に学術・業務渡航に特化
独自開発システムで学会運営サポートも

アートツーリスト代表取締役の上原氏。京都府旅行業協同組合理事長、全旅取締役なども務める  昨年はOTAの躍進や相次ぐ他業種からの参入などにより、業界環境のさらなる変化が進んだ1年となった。とはいえそのような状況でも全国にはまだまだ、痒い所に手が届く高品質なサービスで利用者の評価・信頼を得て、販売力を維持・拡大している旅行会社は多い。本誌ではそのような会社を「フルサービスエージェント(FSA)」と定義し、今後はその力や役割を業界の内外に紹介すべく、不定期で代表者のインタビュー記事を掲載する。

 第1回は、京都市を拠点に、学術渡航と業務渡航専門の旅行会社として大学教授や研究者の旅行手配などを取り扱うアートツーリストの代表取締役の上原龍男氏に話を聞いた。(聞き手:トラベルビジョン代表取締役会長 岡田直樹)

-まずは、主な業務内容や事業規模などについて教えて下さい

上原龍男氏(以下敬称略) 当社は大学や研究機関などの先生方を顧客に持ち、学術渡航や業務渡航の手配、招聘の手配、学会運営サポートをしている。2017年度決算における取扱額は約10億円で、そのうち渡航支援が7割を占め、残りは招聘支援が2割、学会支援が1割だった。

-アートツーリストを立ち上げる前は何をされていましたか

上原 同じ京都の旅行会社のエルムンド・トラベルで6年間、営業職として勤務し、その頃から大学の先生方を顧客としていた。その後、1987年に29歳でアートツーリストを立ち上げ、2017年には創立30周年を迎えた。現在の社員数は役員を入れて17名。関西からスタートしたが、顧客は中国地方や四国、北陸、東海、関東へと全国に拡大しており、現在は関西の割合は6割ほどとなっている。

-大学の先生方に対してはどのような営業をされていますか

上原 一般の旅行会社と違い、我々のターゲットは大学や研究機関、教授や研究者とはっきりしている。大学の先生方は海外出張が多く、しかもお忙しいので、出張期間や移動日だけを伺い、あとはこちらで最短の移動ルートや快適な宿泊など、出張手配に関するほぼすべてをサポートする。航空券やホテルの安さを追求するよりも、しっかりとしたスケジュール管理のために当社を使っていただいている印象だ。

 大学の先生方は、普段から学生と接しているので、営業マンが若くても、人柄や個性次第で「応援してあげよう」という気持ちになっていただけるようだ。また、営業が新人だったり、途中で交代したりするようなことがあっても、具体的な手配は別の業務担当者がバックアップしているので、常に状況を把握している者が2名以上いる環境に信頼を寄せていただいている。そのため、顧客が簡単に離れることはない。