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19年は新時代を迎える「挑む」年、大型イベントに期待も-年頭所感(1)

ツーリズムEXPOジャパン2018の様子  2018年は7月の豪雨や9月の台風21号上陸、北海道胆振東部地震など多くの自然災害が発生し、旅行者の「安心・安全」に改めて注目が集まった。19年は30年ぶりの「改元」が予定され、ラグビーワールドカップ(ラグビーW杯)の日本開催、G20大阪サミットなど、さまざまな大型イベントが予定されている。新しい時代を迎える「節目の年」でもあり、20年の東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪)を控える今年、旅行業界のさらなる発展に向けて、各社はどのように取り組むのか。業界団体や大手旅行会社、航空会社、観光庁などのトップによる年頭所感の要旨を紹介する。

※旅行会社と航空会社の掲載順は18年度上期の総旅行取扱額順

日本旅行業協会(JATA)会長 田川博己氏

 昨年を振り返ると、海外旅行はさまざまな事件やリスクにもかかわらず伸長し、1900万人に迫る勢いだが、国内・訪日旅行は自然災害の影響を大きく受けた。JATAは「ふっこう割」などの取組により、観光地の復興に役割を果たすことができた。

 昨年は「備」(備える)年と位置づけ、国際観光旅客税(いわゆる出国税)の導入や大型倒産防止のための制度の開始、ランドオペレーター登録制度などへの対応を進めた。出国税については、訪日4000万人の達成と6000万人の高みをめざすにあたり、有効な活用案を提言し続ける。海外旅行では、旅行会社による独自の安全情報プラットフォームを提供することで旅行者の安全・安心に資するほか、若者の海外体験を促すプロジェクトを実施。国内旅行はテーマ型旅行商品の開発、長期滞在型企画の実施など新しい旅の形を提案する。

 昨年、ツーリズムEXPOジャパンは世界最大級の観光博覧会・展示商談会となった。今年は初の地方開催として、25年の大阪万博開催が決定した大阪・関西で開催する。新しいツーリズムのカタチをお見せするとともに、大阪・関西らしい楽しく役に立つイベントを実現する。

 今年は大阪のG20、横浜の第7回アフリカ開発会議、天皇陛下のご退位とご即位、さらにはラグビーW杯も開催される。世界の耳目が日本に集まり、双方向交流の気運の高まりが予想される。更なる交流の促進により相互理解が深まることが、国際平和の実現につながると考えている。また、国連の掲げる持続可能な開発の目標に対しても観光は大きな役割を担う。その役割における責任を自覚し、観光産業のリーダー役を務めていきたい。

 今年の標語は漢字一文字で表すなら「挑」(挑む)。ラグビー精神にあやかって「チャレンジ&トライ」の年にする。

観光庁長官 田端浩氏

 昨年は、観光庁が発足から10周年を迎える節目の年で、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録され、25年の大阪万博開催が決定するなど明るい話題が続いた一方で、大規模な災害が相次ぎ、各観光地に深刻な影響を及ぼした。

 こうした状況の中、日本政府観光局(JNTO)コールセンターに365日24時間の多言語対応体制を確立するなど、外国人旅行者の情報入手手段の多重化をはかった。観光需要の早期回復のため、西日本や北海道で「ふっこう割」も導入した。これらの取組で災害による影響を最小限に収めた結果、訪日外国人旅行者数は史上初めて年間累計3000万人を突破した。次の20年4000万人、30年6000万人の目標達成のためには、地方誘客と消費拡大に向けた取組の推進が重要だ。

 インバウンド拡大については欧米豪市場を対象としたグローバルキャンペーンや、新市場の取り込みに向けたプロモーション活動を強化する。今年のラグビーW杯、20年の東京五輪などの大規模イベントで、訪日外国人の長期滞在による消費拡大が期待される。地域の魅力を発信する大きなチャンスになるので、官民連携で準備を進めていく。

 また、地方への誘客促進のため、先進的なデジタルプロモーションの推進、ナイトタイムの活性化などを通じた体験型観光コンテンツの充実、文化財や国立公園などでの魅力的な多言語解説の充実などを通じて滞在時の満足度向上をはかる。あわせて、外国人旅行者に選好される魅力的なコンテンツの開発・強化などに取り組める、世界水準のDMOの形成・育成を推進する。

 昨年は、改正通訳案内士法や改正旅行業法、住宅宿泊事業法(民泊新法)など、観光関連の新たな制度が施行された。特に民泊は関係省庁や関係自治体と連携し、健全な民泊の普及に努める。また、観光産業の基幹産業化のため、喫緊の課題である人材不足の解消にも取り組む。女性や高齢者なども活躍できる環境を整備し、生産性の向上が一層進むよう支援する。出入国管理及び難民認定法の4月からの施行に向け、宿泊業における外国人材受入の環境整備も進める。

 アウトバウンドは、諸外国との双方向の交流拡大を通じて相互理解を深めるという外交政策の観点からも極めて重要であり、強力に進めていく。新たな魅力あるディスティネーションの開拓を官民挙げて取り組むとともに、特に若者の「海外体験」を広げるための国民的ムーブメントの醸成のため、観光庁・旅行業界の呼びかけによる関係府省・経済界・教育界と一体となった横断的な組織の設置や、旅行安全情報共有プラットフォームの構築も進める。

 今年の10月には北海道倶知安町でG20観光大臣会合を開催する。日本は議長国として議論をリードするとともに、我が国の観光政策及び観光の魅力を世界に発信していく。観光庁としては、1月より徴収が開始された出国税の税収も活用しながら、観光ビジョンで掲げた目標の達成に向けて、政府一丸、官民一体で取り組んでいく。

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