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JTB高橋社長に聞く第3の創業-22年度の収益の半分は「旅行業以外」

再統合でビジネスモデルを変革
これからの主軸は「ソリューション事業」

 JTBは次の100年に向け「第3の創業」への挑戦を始めた。大改革の舵を握る代表取締役社長の高橋広行氏(※高ははしご高)は交流創造事業にかける。その熱い思いと重い決断の背景には、JTBですら飲み込みかねない巨大なうねりとなって押し寄せるビジネス環境の激変がある。高橋氏が思い描く明日のJTBの姿について話を聞いた。

-14年6月の社長就任から4年半が経ちましたが、旅行業を取り巻く環境はどのように変化しましたか

高橋広行氏(以下敬称略) 社長就任以降を振り返れば、環境の変化が極めて速かった。インバウンドの急増、オンライン販売の拡大、民泊をはじめとするシェアリングエコノミーが瞬く間に市民権を得た。競う相手は国内の旅行会社ではなく巨大なグローバルOTAとなった。

 ここ数年で業界の勢力図は大きく変化した。OTAが台頭し、グローバルではTUIやトーマス・クックなどリアルエージェントが伸び悩んでいる。かつてTUIはクルーズ船やバス、ホテルを自社で持ち垂直統合型のビジネスで一世を風靡したが、それが通用しなくなっている。トーマス・クックも店舗網を大幅に整理しているようだ。

 社長就任当初はそれまでの経営路線を踏襲する形でスタートしたが、こうした急速な環境変化によって、このままでは必ず立ち行かなくなるとの危機感が高まった。そのため、2006年に実施した分社化から、昨年の4月にもう一度、1つのJTBに統合するという大きな改革に踏み切ることにした。もちろん単に元の鞘に戻すのではなく、形は同じJTBだが中身は以前とは似て非なるものだ。

 それは、次の100年を見据えて「第3の創業」に挑戦し、交流の創造によって個人や法人、社会や国が抱える課題の解決、つまりソリューションの提供をめざす「交流創造事業」を事業ドメインにするということ。我々は約100年にわたり旅行の企画・販売を中心に事業を展開してきたが、これからは旅行を事業目的にはしない。ソリューションのコンテンツの一つに旅行があるという位置づけだ。

-経営の大改革にあたり、再統合した一番の理由は何ですか

高橋 国内の同業他社が競争相手だったこれまでと違い、これからは巨大なグローバルOTAと渡り合わなくてはならなくなった。分社化したままではとても戦えない。経営資源を集約し、大きな経営資源を持って対抗していく必要がある。もう一つは意思決定のスピードアップだ。これも分社化したままでは思うようにいかない。

 ただし、JTBメディアリテーリングやJTBガイアレック、JTBグランドツアー&サービス、JTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT)は今後も別会社のままだ。専門会社は専門性の確保や人材、ノウハウの蓄積の点で別会社のままの方がいい。例えば訪日旅行専門のJTBGMTについては、訪日旅行は伸びているとはいえ、まだまだ伸ばしていかなければならない。主力の国内旅行や海外旅行と同じようにJTBに統合してしまうと、大きなJTBの中で後回しとなり埋没してしまう危険性がある。そこを配慮した。なお、仕入れは各専門会社ともにJTBと一元化し、スケールメリットを追求している。

 また、再統合に合わせて店舗を統廃合し、70店舗ほど減らした。単に閉店したのではなく、商圏が重なるような店舗もあったので効率化をはかった。これで店舗整理はいったん落ち着いた。