「手のひらの旅行会社」へ-ソフトバンク提携のhandy、元HIS平林氏参画も

タビナカ商品を年間8600万人に訴求
旅行会社にもスマホ貸出検討、差別化の一歩へ

(左から)平林氏、勝瀬氏  国内でホテル宿泊者向けにスマートフォンの無料レンタルサービス「handy」を展開するhandy Japanはこのほどソフトバンクとの業務資本提携を締結し、「Travel Agent」「Hotel IoT」「Media」の3領域に注力することを発表した。このうち、旅行者向けにアクティビティなどを販売し、決済サービスを提供する「Travel Agent」領域については、このほど元エイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役社長の平林朗氏をCEOとして招き入れた。年内に第3種旅行業を取得し、「手のひらの旅行会社」となるべく尽力するという、handy Japan最高経営責任者で元ブッキング・ドットコム・ジャパン日本地区統括リージョナルマネージャーの勝瀬博則氏と平林氏に、これまでの取り組みやTravel Agent領域の今後の方針などを聞いた。


-勝瀬氏に伺います。ブッキング・ドットコム・ジャパンを退社し、handy Japanの最高経営責任者に就いた理由を教えてください

勝瀬博則氏(以下敬称略) もともとしたかったことは「お年寄りの仕事を作る」こと。人間の寿命が伸び、高齢化が進むなか、65歳で定年を迎えた後も働ける社会にしたいという思いがあった。以前勤めていた製薬会社を退社した後にブッキング・ドットコム・ジャパンにお声がけいただいたとき、「観光立国」においてお年寄りが主役になれると感じたことから入社を決めた。ブッキング・ドットコム・ジャパンはとても素晴らしい会社で、多くの外国人旅行者を日本に連れてくることができた。

 ただ、親会社のBooking.comは大手グローバル企業のため、商品開発の優先度やリソースのかけ方は市場の規模の大きさで決まっていた。オランダでスタートした企業なので欧州市場がメインで、日本は当時トップ10にも入っておらず、リソースがあまり割けなかった。ブッキング・ドットコム・ジャパンではとても勉強させていただいたが、「お年寄りの仕事を作る」という自分のやりたいことができない状況は辛かった。

 handyは2012年、香港のベンチャー企業「Tink Labs」が開始し、現在はTink Labsの持株会社のMango International Group Limited(Mango)がサービスを提供している。ベンチャー企業によるまだ若いビジネスなので、すぐに日本でリソースを割けるようになると感じて参画した。なお、handy JapanはMangoとシャープが16年12月に合弁会社として設立。17年7月から日本で「handy」のサービスを開始している。

 現在はサービスの対象は、handyを導入している宿泊施設の宿泊者のみだが、将来的には若者からお年寄りまで、貧富の差に関係なく平等に無料の携帯を配布し、携帯を使ってお年寄りが農作物を販売するなど、さまざまな利用ができるようにしたい。

 現在、handyは携帯端末の貸出代金と広告費用で収益を得ている。将来的には広告やeコマースなどで収益を得て、端末をエンドユーザーに無料で提供したい。


-このほどソフトバンクと提携されました

勝瀬 handyの端末はシャープに戦略的なコストで提供していただいていた。その後、回線使用料も大きな負担であるため「回線事業者と組みたい」との思いがあり、今回の提携に至った。ソフトバンクはタクシーの配車アプリを提供する会社やIoTサービス、決済サービスを提供する会社などさまざまな分野のナンバーワン企業と組んでいる。そうした企業と我々が個別に提携するには時間がかかるが、ソフトバンクの力を借りることができることもメリットだ。

 会社に最も必要なものはスピードだと思っている。handy Japanはサービス開始後3ヶ月で国内契約数が10万台を突破し、現在は国内の1700軒の宿泊施設、約24万室に順次導入しているところ。年間8600万人が利用できる体制になりつつある。これからは平林さんのような旅行業界の知識・経験がある有能な人をお迎えし、ソフトバンクと共にビジネスを展開していきたい。