itt TOKYO2024

週間ランキング、1位は下請法違反、HIS宇宙旅行も

[総評] 今週の1位は、農協観光が「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」に違反したとして勧告を受けた記事です。旅行業界では日本旅行に続く久しぶりの2社目が農協観光ということで、世間を賑わす農協改革問題の余波かと一瞬考えてしまいました。そんなことはありえないでしょうけれども、いずれにしても残念な目立ち方です。

 業界誌なんだから傷口に塩を塗るような記事を書かなくても、というご意見もあろうかと思いますが、臭いものに蓋をしていては何の解決にもならないでしょう。金銭の徴収や値下げ圧力、高額の懇親ツアーへの参加要請といった事例は農協観光以外でも色々と耳にすることがあるところで、仮にそれが慣習としておこなわれてきたことであっても、法によって禁じられているのであれば根絶しなければなりません。

 そう考えますと、農協観光を責めるなどというよりもむしろ、万が一にも「そんなに悪いことではない」「農協観光は運が悪かった」「必要悪」といった考えを持たれる方がいるとすればそちらの方が心配です。

 例えば、旅行業界として海外OTAとの競争条件を同一にすべきと要望していますが、自らが法をないがしろにして他人には遵法を求めるというのは虫のいい話です。同じ職場内で他人に厳しく自分に甘い人物がいたとして、その人物は周囲からどのように扱われるでしょうか。

 記事でも触れましたが、公正取引委員会が下請法の「運用基準」というものの改正をめざしており、改正案は旅行会社とツアーオペレーターの取引が対象となること、そして販売促進費などの名目で金銭の提供を求めたり値下げをさせるたりするのは違反であることが従来よりも明確に伝わるようになっています。

 旅行業界の商習慣は旅行者には本質的に関係なく、ましてや今や正論が(時に必要以上に)幅をきかせる時代ですので、こうしたことが続くとお客様の支持を失うどころか炎上のリスクもあるでしょう。

 炎上といえば、DeNAが運営する医療系のキュレーションサイトで不正確な、あるいは他サイトから無断引用したコンテンツを大量に公開していたことで大きな問題となり、その余波はFind Travelにまで及んで12月2日16時現在、一切の記事を読めない状態となっています。

 トラベルビジョンはオンラインのメディアながら自嘲を込めて「昔かたぎ」の媒体でして、裏の取れていない2次情報、3次情報を(しかもコピー&ペーストで)掲載するという暴挙は信じられませんが、逆にいえば現在はそれがまかり通るどころか当然のようになっていると感じます。

 弊社は、訪日外国人旅行者向けの多言語情報サイト「Japan Hoppers」も運営しているのですが、そのコンテンツの作成時にある会社のサービスを利用したところ、優秀なライターがオリジナルの記事を書きますというような触れ込みであったにも関わらず納品されたのは他サイトの無断引用ばかりのうえ、苦情をいっても「こんなものです」といった反応で、非常に難儀した覚えがあります。

 久しぶりに会社名を検索してみるとまだ健在のようで、他社からはそれで受け入れられているのかもしれませんが、一方ではDeNAのように問題となることもあって不思議な世の中です。

 なお、4位にはエイチ・アイ・エス(HIS)とANAホールディングス(ANAHD)などが宇宙旅行などを事業化するべく資本提携した記事もランクインしました。HISの澤田社長はつい先日「脱旅行会社」を宣言されたばかり(リンク)ですが、今回の発表もあっと驚く内容です。

 旅行業界に大きな変化をもたらしたHISやスカイマーク(BC)、変なホテル、そして宇宙旅行と、型にとらわれないことに取り組み続けてこられた澤田氏の目に、下請法や昨今のネットビジネスなどの話題がどのように映っているか是非お聞きしてみたいところです。

 いずれにしても、旅行業界としては公正取引委員会から何年かに1回見せしめのように勧告を受けるのを傍観しているだけでなく、各社あるいは各人が自発的に抜け出すような流れが必要でしょう。とはいえ、残念ながらそんな流れが簡単に生まれるとも思えませんので、膿を出し切るという意味でもそういった事例があれば積極的に公正取引委員会などに報告、相談していくべきではないかと思います。(松本)

▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年11月25日0時~12月02日17時)
第1位
農協観光に下請法違反で勧告-OTOA、「相談する勇気を」(16/11/30)

第2位
関空、10月の国際線は旅客数・発着回数ともに過去最高(16/11/28)

第3位
業法検討WG、着地型推進とランオペ規制の方向性示す (16/11/27)

第4位
HISとANAHD、23年に宇宙旅行、ベンチャーに出資(16/12/01)

第5位
主要50社、16年上期の海外旅行は5%減、単価は7.9%減(16/11/27)

第6位
トップインタビュー:コスタクルーズ日本支社長の糸川雄介氏(16/12/01)

第7位
現地レポート:ミネアポリス/セントポールの観光の底力(16/11/29)

第8位
フィンエアー、日本へ投資継続、福岡も「期待以上」(16/11/29)

第9位
TDR近郊に日本初の「ハイアットプレイス」、19年春に(16/12/01)

第10位
HIS、通期業績予想を下方修正、欧州テロや九州地震が影響(16/11/27)


※除外した記事(本来は10位以内にランクイン)
 ◆人事、ANAグループ-12月1日付(16/11/30)