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JATAやはとバスから意見聴取、法改正要望も-通訳案内士検討会

  • 2015年2月9日

 観光庁は2月9日、第4回の「通訳案内士のあり方に関する検討会」を開催し、この日は日本旅行業協会(JATA)やはとバス、日本政府観光局(JNTO)などから通訳案内士を取り巻く現状や課題、今後の制度改善について意見を聴取した。JATA国内・訪日旅行推進部長の興津泰則氏は、通訳案内士の質の向上や地域分散化に向け、研修制度の義務化や地域限定ガイドの創設を提案。はとバス国際事業部開発課次長の森嶋敏夫氏は、格付制度の導入や、通訳案内士に準ずる公的資格の新設などを提案した。

JATA国内・訪日旅行推進部長の興津泰則氏  興津氏は発表の冒頭で、2014年5月から6月にかけて会員企業を対象に実施したアンケートの結果を報告。20社から得られた回答では、ピーク時やクルーズツアーにおける通訳案内士の不足に加え、タイ語などの東南アジア諸語やフランス語やスペイン語などの南欧諸語について「需要と供給のバランスが伴っていない」状況が指摘されたという。また、ツアー利用者からも、インセンティブツアーに随行する通訳案内士がその団体について学習していないことや、旅行者が求めるホスピタリティに対応できていないことに対する不満があったと伝えた。

 今後の通訳案内士制度に対しては、訪日外国人の地域分散化をはかる観点から、地域に根ざした情報を提供できる地域限定の通訳案内士の創設を提案。また、通訳案内士の質の向上に向け、資格取得後のホスピタリティ面の育成も含めた研修制度の義務化を要望し、「我々も機会を提供したい」と前向きな姿勢を見せた。そのほかには資格の更新制度や、評価システムの導入も提案。雇用の促進に向けては、有資格者のリストを一元化してJATAのウェブサイトに掲載する考えを示し、さらにJATAが進める「ツアーオペレーター品質認証制度」の取り組みとも連動して、さらなる訪日外国人増につなげたいとした。

 はとバス国際事業部開発課次長の森嶋敏夫氏は、同社が訪日外国人向けに英語と中国語によるツアーを実施していることを説明した上で、「国内外にツアーの品質をアピールするためには、国家資格を持った通訳案内士の乗務が必須」と強調。その一方で、自社での研修制度が確立できていないなど課題もあることを問題視し、公的機関による研修制度や、資格認定の更新制度などの導入を期待した。

 また、同じ資格保持者でも個人の能力に大きな差が見られることから、公的機関などによる「3ランク程度の格付制度」を提案。「格付けすることにより、訪日外国人向けツアーに認定制度のようなものも設けられる」と述べた。さらには、実際には通訳案内士を必要としない、低コストのアルバイト通訳で十分に対応できるツアーも多いことなどから、通訳案内士に準ずる公的資格や認証制度の新設を要望。「単なる通訳が対応することにより訪日外国人の受入体制が広がり、要望にも応えられるようになる」との見方を示した。

 そのほか、「通訳案内士でないものは、報酬を得て通訳案内を業としておこなってはならない」とする現行の通訳案内士法第36条について、「解釈次第で今後の訪日外国人旅行者の受入体制の整備状況が変化する」と指摘。通訳案内士の利益を損ねないよう配慮した上で、法律の明確な定義づけや現状に則した法改正をおこなうよう希望した。

 この日は、JNTO統括役の小堀守氏が2014年度の試験実施状況などについて報告するとともに、通訳案内士を取り巻く現状については、「海外からの旅行者や現地旅行会社などの要望や視点が、十分に反映されていないのでは」と総括。座長を務める松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科教授の佐藤博康氏は、JNTOによる海外でのアピールなどに期待を示した。

 熊本県を拠点に活動する「NPOディスカバリーくまもとボランティアの会」の理事長を務める野田恭子氏は、活動に関する報告をおこなうとともに、試験制度の改善などを要望。ただし会議では、同会所属の無資格のメンバーが、わずかとはいえ報酬を得て通訳案内業をおこなっている可能性が示唆され、交通費などの必要経費と報酬の線引きについてはさらなる議論の必要性があることが印象づけられた。本誌の取材に応えた観光庁観光地域振興部長の吉田雅彦氏は、野田氏が日本と同様の通訳案内士制度のない米国での生活が長かったことから、「制度に対する認識が不十分だったのかもしれない」との見方を示した上で、「しっかり指導する」とコメントした。

 次回会合は2月17日に開催する予定。JTBグローバルマーケティング&トラベルや日本旅行、ハナツアー、日本観光振興協会から意見を聴取する。