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ゼロ・コミッションでインハウス業態の転機−企業情報扱う付加価値を強みに
[掲載日:2008/11/05]  
インタビュー:コベルコビジネスサポート/コベルコツーリスト取締役ツーリスト部長 村木洋之氏


日本航空(JL)は来年4月から、ゼロ・コミッションを決定したと10月末に旅行各社に正式に伝えている。コミッションの撤廃で、大きな影響を受けるのが正規航空券や正規割引航空券を多く取扱うビジネス旅行やインハウス旅行会社。既にアメリカやヨーロッパの航空会社の一部は、日本で発券する航空券のゼロ・コミッションを開始、あるいは発表している。インハウスのなかでも関東、関西に広く展開しているコベルコツーリストに、影響を聞いた。


■現在のビジネス環境について

 神戸製鋼グループの旅行需要はこの数年、順調に取扱額が伸びてきた。2年前と前年はほぼ横ばいで、この実情は高止まりといえる。取扱人数は過去最高で、東南アジア方面が多い。グループ内の旅行需要は、鉄をはじめ素材を取扱う部門は景気の動向が反映されやすく、機械系・製造部門は景気がやや遅れて反映されてくる。現在の経済環境を考えると、この1年から2年の間にさらに取扱額を伸ばすことは難しい。また、親会社にあたる神戸製鋼の動向にも関わり、外的要因も昨今の経済情勢や為替の変動など不透明な部分が多い。

 こうした環境下で、インハウス旅行会社の生き残り策を考えていくことは大きな課題だ。利益を確保することでグループに金銭的なメリットをもたらす定量的な指標以外に、提供する航空券や旅行のソフトやサービスなど定性的な指標を親会社に評価してもらえるのかがポイントだ。コストを意識すると、常に「安く」という要望になり、競争力を確保することは厳しい。関東は「予定通りの便で行きたい」という要望が強く、関西は「IITやペックス運賃など値段が安く、かつ希望をかなえる」という要望が強いと、地域によって事情も異なる。グループとして事業所が西に多く、プロジェクト単位で出張費が決まることもあり、決められた予算内で出張することが関西では強く反映されるのだろう。当然、社内規定はあるものの、カンパニー別、プロジェクトの案件によって変わる。ただし、全社一丸となって、不要不急の出張を控えることは大前提だ。

■ゼロ・コミッションについて

 コミッションは数年前と比べると、半分、あるいはゼロに向かう動きにあり、危機感を抱いている。航空座席という商品の販売にあたり、その行為に対する収益は「あるべき」と考えている。「ゼロ・コミッション」は航空会社の論理であり、旅行会社に販売をさせつつ、その手間を勘案せずに手数料を「ゼロ」にする考えには疑問を持つ。さまざまな商売において、仕入値があれば、売値があるが、「ゼロ・コミッション」では「仕入値」と「売値」が同じになってくる。つまり、内コミッションから外コミッションに明らかに商流が変わることになる。また、ゼロ・コミッションにより、旅行会社は好条件を得るため、仕入の集約化が促進される半面、生き残りをかけた後先を考えないその場限りの仕入が行われる可能性を秘めている。さらに、マイレージでの囲い込みは確立されているものの、航空会社が意図するであろうそれ以外の集約化、囲い込みは空中分解する可能性もある。

 インハウスは大半がグループ会社の取り扱いで、単体で大きなスケールメリット(販売契約に基づくインセンティブ)を確保することは難しい。スケールメリットを確保できるのは、大手旅行会社の一部に限られると想像する。こうした点で旅行業のビジネスモデルがどのような形かを考えている。一方で、手数料を収受しなければ会社として成り立たない場合、神戸製鋼グループとして、「価格」だけがメリットなのか考えたい。さらに、旅行業界としても「代理店」のビジネスモデルについて、具体的な話が出ておらず、業界の将来に危惧を覚える。

 ゼロ・コミッションになると、航空券面に記載されている金額が原価となる。商品に原価を記す商売は、さまざまな業種を見渡しても、どこに同じような取引形態があるだろうか。つまり、利益、あるいはどのように生計を立てるか、疑問に思われる商売だ。そうした現実が話題にならず、顧客の立場からも疑問が投げかけられないことも問題ではないだろうか。言ってみれば、家電量販店で原価が表示されていると同じことで、それに疑問が投げかけられない事態が今のゼロ・コミッションを取り巻く環境ともいえる。確かに、航空会社、旅行会社ともに、販売側は工夫をすべきであるが、買う側の消費者も疑問に思わないこともおかしいのではないだろうか。個人的には「オープン価格」として、航空会社からの仕入れはネット取引する(原価で取引する)。これにより、旅行会社が航空券を売れる形を作ってほしい。その際に、世界のスタンダードを盾に日本での形式を考えるだけでなく、日本でモデルをどのようにつくり出していくか、その主体的な動きをつくることが大切だ。


■存続に向けた対応

 ゼロ・コミッションが広がることに備え、仕入ルートは再考しなければならない。発券や運営にコストがかかる一方、コミッションがなくなることで手数料収入に依存していては立ち行かない。eチケットでの日付やフライトの変更を行う訂正処理(Re-Validation)や交換発行(Re-Issue)、アメリカの新しい入国制度の電子渡航認証システム(ESTA)など、周辺業務での収益確保は考えなければならない。もちろん、旅行業界における意見集約の場が日本旅行業協会(JATA)しか実質存在しない現状において、JATAが主導するキャンペーンのようなことが必要ではないだろうか。

 一方で、定性的な目標をバランスよく考えることを提案していきたい。親会社が「儲からないから、いらない」ではなく、海外出張が親会社やグループ会社全体のリスク管理という観点から、対価としてお金に換えられないと評価してもらいたいと考えている。海外や国内に出張した社員の所在地など、インハウスが取扱う内容から把握できることは、情報管理という観点でグループ企業以外に依存できることなのか、また、依存する場合のリスクを含めた考え方が必要だ。例えば、社長や役員クラスが移動することにともなう情報漏えい、企業の買収・合併の動き、営業担当者の動静など同業他社に漏れるリスクなど、インハウスが取扱うことで「安心」を提供することができる。こうした点は、本社の人事には伝えている。

 すでに、出張する社員の航空券の手配実績から、その社員の位置を確認できる仕組みの導入を検討している。例えば、欧州のある地点でテロが発生した際に、アメリカやオセアニア等々の出張者にメールなどで連絡し、情報の伝達と安否確認を行なう。あるいは、地域別に行ってはいけないエリアを細かく伝えていく。また、国内でもJALオンラインやANA@DESK、JRエクスプレスカードを活用することにより、グループ全体のボリュームや各社員の動静を一元的に管理し、飛行機や鉄道の事故なども提供できるようにしている。さらにこれにより不要な旅行を抑止する経費削減の観点までも含むこともできるだろう。

 一方で、良いサービスを提供するために、スタッフが現地調査を兼ねて手分けして空港視察をするなど、企業努力で取り組んでいることもある。例えば、バンコクで空港が移転した際に、開港間もない空港がどのような状況であるかを自社スタッフが現地を訪れ、確認してきた。お客様であるグループ会社の社員と同じ情報のレベルでは困るからだ。現場を見てこそインハウスの役割が果たされるし、サービスの向上につながる。副次的には、社員の定着率も高まるし、目の前の情報に反応できることになる。



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