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スペシャリスト・インタビュー:大友旅行社 柴田喜且さん

文化財保存ブームで新素材続々登場の台湾

 台湾を中心にアジア全域の手配を担うツアーオペレーター、大友旅行社の東京事務所でオペレーションマネージャーをつとめる柴田喜且さん。5年間の台湾滞在で得た知識や経験を活かし、台湾の手配を一手に引き受ける柴田さんは、力試しの意味からもDS台湾にチャレンジしたそうです。取得後は、クライアントである旅行会社からの評価も得やすくなったとか。最新事情にも精通する柴田さんに、台湾とご自身との関わり、近年の台湾事情についてお聞きしました。

大友旅行社 東京事務所 オペレーションマネージャー
柴田喜且さん
2009年度(第5回)デスティネーション・スペシャリスト 台湾認定



Q.台湾との関わりについて教えてください

 大学で中国語と日本語教授法を学んだ後、台湾に留学しました。もともとは中国に興味があったのですが、ちょうど天安門事件が起きた時期で中国への留学がかなわず、それなら、と軽い気持ちで台湾に渡ったのです。そこで勉強をしながら、現地の観光局が発行する雑誌の記者をしたり、日本語教師をしたりして、結局5年間滞在しました。帰国後は別の仕事に就き、一時期台湾から離れていたのですが、知人の紹介で大友旅行社に入社し、再び台湾と関わる仕事をしています。ツアーオペレーターは、現地のことをどれだけ知っているかが問われます。DSは、自分の知識がどれだけのものか、いわば力試しのつもりで挑戦しました。


Q.DSを取得してのご感想は

 通信講座を受講している段階では、調べなくても自分の知識だけで解答できるものがほとんどでした。試験の出来もそれなりだったのではないかと思います。取得してから名刺にDSの肩書きを加えていますが、当社のお客様である旅行会社の人たちに対しては、この肩書きが役立っているという実感がありますね。一般消費者への認知度はわかりませんが、さすがに業界内でのDSの認知度は高く、みなさん感心してくださいます。それまでは自分の知識や経験を伝えるのに「台湾に5年住んでいて・・・」という説明が必要でしたが、それが不要になりました。


Q.台湾観光を取り巻く状況について教えてください

 日本からの航空便の数が圧倒的に多い韓国に押され気味ですが、台湾にはここ数年大きな変化があります。故宮博物院、グルメ、温泉以外の観光素材が続々登場しているのです。これは、国の教育制度が変わり、自国の歴史を詳しく教えるようになったことによるもの。現地の人々が身近な歴史遺産に目を向けるようになり、これまで無造作に捨て置かれていた建物などに歴史的意義を見出し始めたのです。その一例が、台北市にある紅楼劇場でしょう。ここはかつて日本人専用の市場だったところで、戦後、映画館に改装されたのですが、徐々に廃れた存在になっていました。それが、文化財保存の波を受け、建物内に博物館や中国茶が楽しめる喫茶店、劇場が整備され、現在、人気のスポットとなっています。東京駅を彷彿とさせるレトロな造りで、なかなか立派な建物ですよ。

 そのほか、花蓮という町には、日本の特攻隊が最後の夜を過ごしたという松園別館があります。政府の施設もどんどん開放される傾向にあり、もともと立ち入り禁止だった総統府が平日の午前中に一部見学できるようになったほか、元台北市長官邸が喫茶店や本屋、公共スペースのある建物に改装されるなど、新たに観光地として整備されたスポットがいくつもあります。日本の歴史と関係のある地も多く、中高年を対象とした高額ツアーの手配を得意としている当社では、将来有望な素材として旅行会社への情報提供も積極的におこなっています。徐々にですが、パッケージツアーの旅程にこうした新素材を加える旅行会社も出てきています。


Q.台湾のお勧め素材はありますか

 たとえば、台北から車で1時間のところに金爪石(きんかせき)という町があります。もともと金山があったところで、黄金博物園という野外博物館になっており、当時皇太子だった昭和天皇が訪れる予定だった太子賓館の観光や砂金すくい体験もできます。台湾ツアーのメインは台北滞在ですが、旅程のうち1日は、空気がきれいで海も眺望できるこうした郊外の町でゆっくり過ごすのもよいのではないでしょうか。


Q.台湾の可能性についてお考えを聞かせてください

 台湾に限らず、海外旅行そのものを目的とせず、何かをしに海外に行く、という考えの旅行者が増えてきているように思います。われわれも、台湾で何ができて何が商品化できるかを常に考えていますが、その中でもぜひお勧めしたいのが、チームビルディングを目的とした社員研修です。たとえば、社員をチームに分け、各チームにそれぞれ写真を見せて該当の場所を訪ねるといった課題を与えるのです。台北の街はコンパクトで、地下鉄やタクシーが利用しやすく移動も便利。また、表示が漢字なので、言葉が話せなくても迷子になることはほとんどありません。こうした街の特性を活かせば、ユニークなプログラムが可能だと思いますね。今後は、中国語や台湾茶芸、太極拳などテーマごとの短期留学の手配も考えていきたいと思っています。


ありがとうございました


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