インタビュー:スイス・インターナショナル・エアラインズCCOと日本支社長

  • 2010年3月16日
“クオリティ・エアライン”質の高いサービスとプロダクトで競争力強化
日本路線、ピークシーズンに旺盛な需要



 世界的に景気の低迷が続くなかでも、スイス・インターナショナル・エアラインズ(LX)の2009年(1月から12月)の総旅客数は前年度比2.4%増を記録した。平均搭乗率も80.1%と高い数字を残している。日本市場ではピークシーズンとなる夏季の需要が好調に推移し、搭乗率は前年を上回った。“クオリティ・エアライン”として、プロダクトおよびサービスの向上を進め、他社との差別化を図っているLX。2009年の振り返りと今後のビジネス展開について、LXチーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)のホルガー・ヘッティ氏と日本支社長の岡部昇氏に話を聞いた。
                  
                
−現在LXがおかれている環境をどう分析されていますか

ホルガー・ヘッティ氏(以下、敬称略) 2009年は世界的な景気低迷の影響を受けたものの、総旅客数は前年実績を上回ることができ、我々にとって成功の年だったといえる。問題は旅客のイールドが下がったことだが、コスト節減の努力のおかげで他社よりもいい結果を残すことができた。旅客数だけでなく、定時運航率や顧客満足度も向上している。ヨーロッパでも成功を収めている航空会社のひとつといえるのではないだろうか。

 日本市場についても、成田線の旅客数、搭乗率ともに満足のいく結果を残せた。我々は日本とスイスを結ぶ唯一の航空会社。(メガキャリアと比較すると)小規模な航空会社だが、日本でも上質な航空会社として認知されてきているのではないか。

岡部昇氏(以下、敬称略) 私も昨年の結果には満足している。特に夏季の需要は好調に推移し、搭乗率は前年同期を上回った。夏季に限れば、もっと大型の機材が必要になるほどの需要の高さだ。


−需要は強いとのことですが、日本路線での座席供給量を増やす計画はありますか

ヘッティ 現在のところその計画はない。まずは、この旅客数を維持する一方で、イールドを上げていく努力をしていく。景気低迷は底を打ち、回復に向かっているという見方があるが、先行きはまだ不透明。キャパシティの増加は慎重に見極めていく必要がある。今後とも旅行会社など複合的な販売チャンネルを通じて、イールド・マネージメントを強化していく。付加価値の高いプレミアム戦略で高収益な旅客を獲得していくことが必要になってくるだろう。

岡部 価格競争をしていたのでは未来はないと思う。適切なプロダクトとサービスを適正な価格で提供していくことが大切。(プロダクトやサービスの質が高ければ)妥当な高さの運賃は受け入れられるはずだ。


−成田増枠後に成田/スイス線で週2便の増便が認められています

ヘッティ それも現時点では考えていない。羽田、札幌、中部など他の空港への就航計画も今のところない。我々が重視しているのはデイリー運航をすること。利用者の利便性を考えるとき、週7便を飛ばせないと競争力はないと思う。今は、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)や全日空(NH)などアライアンス・メンバーと協力しながらネッワークの維持・拡大をしていく方針だ。


−プレミアム戦略の対極は格安航空会社(LCC)ですが、一部のフルサービスキャリア(FSC)は、LCCのようにサービスを有料販売し始めている航空会社もあります。これについてどのようにお考えでしょうか

ヘッティ 我々はLCCとは一線を画すビジネスを展開している。我々の基本コンセプトはオールインクルーシブ。LCCは確かにFSCよりも安い運賃を提供しているが、例えば機内持ち込みバッグへの課金などサービスごとに追加料金が発生する。すべてを含めると、結果的にオールインクルーシブの我々よりも高い運賃になってしまうのではないか。利用者にも複雑で分かりにくい運賃体系だと思う。

 ただ、そのオールインクルーシブを基本として、車の販売のように、追加オプションで収益を上げる方法は考えられるかもしれない。メルセデス・ベンツにオプションを加えてもメルセデス・ベンツであることに変わりはないように。


−グループ企業であるLHとの協力関係を教えてください

ヘッティ LHとはグループ企業として協力関係にあるが、それぞれ独立した航空会社。LHはコーポレート需要に強く、我々はレジャーに強い。客層が異なり、競合関係にはない。販売活動については部分的に統合されており、市場ごとにその役割は変わってくる。日本ではLHとLXと二つの販売組織があるが、それぞれ販売対象が異なるので、それは合理的な方法だと思う。

岡部 販売については、市場ごとに文化、客層、売り方に違いがある。日本では、日本市場に一番適した方法として別々の組織でセールスを展開している。それは決して協力しあわないという意味ではない。協力できるところは協力していくというスタンスだ。


−2010年の市場動向をどう見ていますか

ヘッティ アジア市場は成長を続けていくだろう。中国やインドなど新興国も経済危機の影響を受けていたが、現在は回復基調にある。日本市場も基本的には同じだと思う。ヨーロッパの国々も今年はよくなるだろう。経済状況が好転すれば、航空会社の業績も上がっていくはずだ。

 我々のビジネスについていえば、以遠路線よりも(目的地をダイレクトに結ぶ)ローカル路線が好調に推移している。これはイールド上昇にとっていい兆候だ。今年もその傾向が続くことを期待している。成田/チューリッヒ線でもその傾向は同じだ。昨年も5月から10月のハイシーズンでは、ローカル路線の結果は非常によく、他の月ではチューリッヒから他のヨーロッパの都市に飛ぶ以遠路線の需要が高かった。


−旅行業界へのメッセージをお願いします

ヘッティ 我々にとって日本はアメリカに次いで2番目に重要な国際市場であることを強調しておきたい。ぜひLXの予約を増やして欲しい。我々はクオリティ・エアラインとして最高のサービスとプロダクトを提供している自負がある。

 現在は、エアバスA330-200型機から同A330-300型機に機材の大型化を進めているところで、ビジネスクラスでフルフラットシートへの刷新も進めている。また、すべてのクラスでオンディマンドのエンターテイメント・システムも導入する。最新のエアバスA340型機の内装もアップグレードする。来年の前半には成田線にも新しくなったA340型機を導入する予定だ。

岡部 今年もクオリティ・エアラインとして一人一人のお客様のニーズを満たしていきたい。そのために、さらにアップグレードされたサービスとプロダクトを提供していく考えだ。


−ありがとうございました