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インタビュー:ハワイ・ツーリズム・オーソリティ新CEOマッカートニー氏

  • 2009年7月1日
日本市場と新しい関係構築で需要回復へ
アロハ・スピリットを共有したい


 4月にハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)のCEOに就任したマイク・マッカートニー氏。景気後退や新型インフルエンザのほか、日本では海外旅行市場全体も低迷するなど、対処すべき課題は多い。日本の旅行業界にとって、年間の日本人渡航者数が100万人を超えるハワイの重要性はいうまでもなく、HTAがどのように日本市場を捉えるかに注目が集まる。マッカートニー氏がこのほど来日して開催した記者会見で、今後の方針を語った。





■就任の抱負、日本市場の認識

 観光はハワイ州の経済にとって最も重要だ。波及効果を含めると州内総生産の40%は観光に関係し、就業人口の80%は直接的、間接的に観光に関わっており、この職に重大な責任を感じている。就任にあたっては、元州知事のジョージ・アリヨシ氏から助言をもらっており、今日のハワイの繁栄は日本の旅行市場によるところが大きいと聞いている。今のハワイの生活はすべて観光に強く依存しており、特に日本からのサポートが重要であるということだ。個人的にも私の祖父母が日本出身で親近感もあり、私にとって日本とハワイは兄弟姉妹のような関係だ。そのため、4月6日に着任して今回が初めての海外出張だが、最初の訪問先は日本を選んだ。

 今回の来日の目的は、旅行会社や航空会社の方々への挨拶と、新型インフルエンザの影響を受けた後、もう一度歓迎する用意ができていることを伝えること。ハワイは旅行会社や航空会社、ホテルなど関係するプレーヤーが連携を密に取れる環境ができており、戦略的にかなりのアドバンテージがあると考えている。


■7月1日からの新年度、HTJの予算が減少することについて

 新年度のHTJの予算は、確かに前年比50万米ドル減の730万米ドルとなる。しかし、基本的には管理部門のコストを見直すことでマーケティング用の予算には影響が出ないようにしている。また、北米や日本など重要な市場向けのマーケティング用の追加予算「マーケティング・オポチュニティ・ファンド」を初めて設け、1000万米ドルを確保したほか、提供座席量増加に向けた予算300万米ドルも用意しており、日本市場への予算は見かけ上は減っていても、実質的には増えるのではないかと考えている。

 マーケティング・オポチュニティ・ファンドは、各市場にあらかじめ配分するのではなく、各市場からプロモーションプランの提案を受け、他デスティネーションとの競合が厳しい中で、シェア拡大の効果が期待できるものを選択して投資するもの。特に、市場環境が悪化しているため、即効性のある具体的なプランを想定している。

 また、予算措置ではないが、映像関係の機関をHTAに組み込むことも決まっている。ニューヨークやニュージーランドなどの観光局でも同様に映像関係の機関を組み込み、成功していると聞いている。映像が観光に与える影響は大きいと確信しており、この決定を歓迎している。


■日本市場での活動方針

 来日前にもホノルルで日本の旅行会社の方々と情報交換し、勉強させてもらっており、新しい関係を築きながら日本市場に注力していきたい。日本ハワイ観光協議会(JHTC)は5月の開催予定が延期になってしまったが、今回の来日で委員の方々とお会いし、9月14日に東京で次回の会議を開催することが決定した。委員の方々からは貴重な意見を聞くことができ、教育旅行への取り組みなどマーケティング・オポチュニティ・ファンドに申請可能と考えられるようなプランもあった。また、年2回集まって直接コミュニケーションする会議だけでなく、ウェブカメラを使用した会議なども実施し、より緊密にコンタクトを取りたいと考えている。

 航空網の問題については、座席供給量増加に向けた予算を新しい路線やチャーター便を新たに設定できる可能性のあるところに投入したい。この予算は特に航空会社やホールセラーとのコラボレーションが重要になるだろう。地方の直行便の減少については、ソウルや台北経由の送客方法があると聞いており、このほかチャーター便にも期待したい。今回の来日でも主要な航空会社とはすべて面会し、なんとか座席供給量を増加してもらえるよう話した。今後、可能性があればオープンに協議していきたい。

 また、日本市場ではこの数年間、質(消費額)を追及してきたが、世界的に競争が激化する中で、訪問者数でのマーケットシェア拡大も重視したい。3月から日本人訪問者数が伸びているが、これは旅行会社による安価な商品の投入が要因であることは間違いない。この数年、競合デスティネーションとの価格差から「行きたいけれども高いから行けない」と考えていた旅行者に対して、旅行費用がこなれてきた今こそ需要を喚起したい。


■ハワイの魅力について

 ハワイの強みは単なるビーチリゾートというだけでなく、旅行者の想像を超える多様な魅力を備えていることだ。また、「人」もアドバンテージといえる。私自身、沖縄とアイルランドの血が入っているが、多様な人種が集まっていることで、ミックスした文化や歴史がある。もちろんその土台となるハワイ独自の文化もある。

 そして、この役職を務める間の目標として、ハワイはアロハ・スピリットを持ったデスティネーションだと知らせたい。アロハ・スピリットはハワイ独自の文化が与えてくれた贈り物だと考えている。つかみどころのないもので、パンフレットやテレビCMでは伝えにくいことだが、それを魅力と捉えてハワイに来ていただきたい。私はアロハ・スピリットを「プロモート」するのではなく「シェア」したい。観光を通してそれができれば幸いだ。


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