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スペシャリスト・インタビュー:ユナイテッドツアーズ 末次博文さん

台湾は200万人以上が行ってもおかしくないデスティネーション
その魅力を旅行業界が忘れないようにしたい


ユナイテッドツアーズは台湾専門として発足した旅行会社の中で、存続する唯一の旅行会社。現在はホールセラーとして全世界を扱っていますが、台湾が強みと自負しているだけあり、近畿日本ツーリストグループの研修制度「トラベルアドバイザー」の台湾養成コースにも社長を含む全社員が受講されたほど力を入れています。そんな同社で21年勤務され、航空券やランド手配、パッケージ企画・造成に携わってこられた末次さんに、台湾旅行の魅力をうかがいました。

株式会社ユナイテッドツアーズ
 名古屋支店部長 末次博文さん
  2008年度(第4回)デスティネーション・スペシャリスト 台湾認定



Q.台湾に詳しいと思うのですが、DSが業務に役立つことはありますか

 台湾に関する営業活動では、DS認定者のシールを貼った名刺をお渡ししています。すると台湾に関して、私への問い合せが増えました。内容もお祭りの日程やレストランの食事のメニューなど、その時々で変化があるような細かい質問です。ですからお客様に間違った案内をしないよう従来以上に勉強し、台湾の資料を身近に置いたり、インターネットで「お気に入り」に関連サイトを項目別に分けて入れるなど、情報をすぐに取り出せるようにしています。質問に早く正確に回答できるようにするのが、専門業者の役割だと思います。

 DSは出題の範囲が広かったですね。最近の台湾旅行は、台湾=台北のマーケットですが、台北だけでは通用しない出題です。台湾は全土にわたって魅力のあるスポットがあり、それを紹介するのが旅行会社の仕事。そのためには台北のほか、南部や中部、そして内陸も知らないといけません。DSでは今の業界に欠けている部分を、出題していると思います。


Q.台湾の旅行のうち、台北の商品はどれくらいありますか

 現在の市場に出ている台湾ツアーのうち、8割から9割が台北モノの商品です。こうなった背景には、長期の旅行に行かなくなった日本人の旅行形態の変化があると思いますが、もう一方で集客ばかりを求めて安価に設定できるツアーを増やしてきた業界側の問題があると思います。10年くらい前までは台湾で2都市や3都市、周遊型ツアーも豊富にあったんですよ。こうしたツアーはシニア層の参加者が多かったのですが、最近は週末で台湾に行く若い女性が増えました。今後はこうした方々に台湾は長期で行っても楽しめるデスティネーションであることを伝えたいと思います。


Q.旅行先としての台湾の特徴を教えてください

 まず、日本人が親しみやすい特徴があげられます。食事は口にあいますし、親日的で治安も良い。日本語を学ぶ人も多く、街を歩いていると学生さんが気さくに日本語で話しかけてくれるなど、人の温かさを感じられるデスティネーションです。

 また、スポットでは台北のシティだけでなく、近郊には映画「悲情城市」や「千と千尋の神隠し」の舞台になった赤提灯の風情ある坂の街「九ふん」もあり、同じ街歩き観光でも多様な魅力に出会えます。台中は有名な宝覚寺や孔子廟などの観光スポットのほか、山々に囲まれ幻想的な風景を映し出す日月潭や紹興酒、ビーフンで有名な埔里(プーリー)など内陸へのゲートウェイでもあります。プーリーでは紹興酒工場の見学もでき、この地域の紹興酒ビーフンは美味しいですよ。その先には、日本でも高級烏龍茶で有名な凍頂山の広大な茶畑があります。凍頂烏龍茶は香りも味もほんのり甘いのが特徴。何十軒も立ち並ぶお茶の工場で、試飲をしながら自分にあった烏龍茶の買い付けをするのも、台湾ならではの体験でしょう。

 さらに、国立公園など自然の観光地も豊富で、南部を拠点に東部の大理石の渓谷で有名な太魯閣(タロコ)国家公園や花東縦谷国家風景区を訪れる周遊旅行も可能です。こうした観光素材を今後はクローズアップさせていく必要があるでしょう。

 実は、台北以外の魅力をアピールしたいと思い、テレビ愛知さんとのタイアップで台北と高雄の周遊コースを今年のお正月特番で紹介しました。台湾新幹線を利用し、台北2泊、高雄1泊の日程で、港町の高雄ではその日に仕入れた海鮮素材で作る高級シーフード料理のレストランや蓮池譚の龍虎搭などの観光名所を、タレントの三倉茉奈・佳奈さんに案内してもらいました。この影響で、高雄へ足を伸ばす人々が徐々に増えてきています。


Q.今後の目標を教えてください

 台湾への日本人旅行者数は現在、年間117万人前後ですが、私は200万人から300万人が旅行するデスティネーションにしたいと思っています。そのためには、旅行会社が台湾の魅力を忘れないようにしなくてはいけませんし、お客様にも旅行先として台湾を意識してもらえるよう、旅行商品の底上げをする必要があります。

 造成側としては、商品やパンフレットの中で観光スポットの特色を打ち出すようにしています。販売側が知るべき知識の手助けをするのが目的です。消費者は知識が豊富で多様なニーズがありますから、それに応えられる商品を揃える必要があり、お客様がご自身で希望のツアーを作れるようなカセットプランや、こちらから提案するフルペンのツアーなどを用意しています。そして日本人渡航者数の増加に繋げ、弊社の目標である日本人の台湾渡航者数のシェア10%獲得をめざします。

 旅行業に携わっている人は旅行のプロになる必要があります。知識がお客様に負けることは恥ずかしいことで、旅行業界から各デスティネーションの魅力を告知できるような知識と意識が求められます。価格だけに走る安易な商品にせず、旅行を通してお客様に喜んでもらうことが本来の業界の姿。それを楽しみに仕事をすることを、忘れないようにしたいと思います。


ありがとうございました


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