椿の花 |
椿の原生林 |
光と影が不思議な光景を生む |
広範囲にわたる枝葉に小ぶりの花 |
落ち椿の道 |
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日本は野生の椿が多く生える「椿の国」。特に有名なのは伊豆の大島と長崎の五島ですが、山口県萩市の笠山も隠れた名所です。
実は萩市は昔から椿が多く自生し、市内には「椿東」や「椿西」など“椿”の名前がつく地名が多く存在しているほど。“萩”という名前も、実は椿の発音がなまったものだとか。
笠山の原生林の特徴は、10ヘクタールの敷地に約2万5000本もの椿がひしめく世界一の密集度。目立った大木こそありませんが、歩道から原生林を眺めると、重なるように群生する椿の白い木肌と原生林の奥の暗い影が織り成すコントラストが、なんともいえない雰囲気をかもし出しています。
原生林の不思議な光景を楽しんだら、今度は上を見上げてみましょう。
野生の椿は家庭で栽培されているものと違って背が高く、枝の広がりも広範囲。そこに小ぶりの花がたくさん咲き、椿のトンネルのように繋がっているところも。
だから、木の下から見上げると太陽の光が花や葉の間から差し込んで、まぶしいほどのきれいな椿を見ることができるのです。
さらに、究極の景色が「落ち椿」。
椿は花首から散るため、散ってもなお椿の花の原型を留めています。その散った花が、原生林内の歩道を埋め尽くすことがあるのです。
特に強い風が吹いた翌日は、歩道の隙間が見えないほどの椿で紅色に染まります。これはまるで、椿の花が織り込まれた赤い絨毯のよう。道の先に続く、原生林のもの静かで奥ゆかしい世界へ誘うように続きます。
この「落ち椿」は、人に踏みしだかれる前に鑑賞するのがベスト。絨毯のような「落ち椿」になるのは年に4、5回ほどですが、滞在中に強風が吹いたら、翌朝は鑑賞できるチャンスの日かもしれません。ぜひ、早起きして出かけてみてはいかがでしょうか。
▽萩・椿まつり 2月18日〜3月21日まで
期間中、笠山は色鮮やかな椿が咲き乱れます。無料で説明をしてくれる「椿見どころ案内人」や「無料シャトルバス」のサービスのほか、特産品の販売や食べ物露店、郷土芸能披露、抹茶席などが楽しめます。
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和の季節 (毎月第1・3金曜更新)
第二十一回 椿の花が導く静かな原生林の世界
――山口県 萩市笠山
2006. 2. 3掲載
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