Photo NEWS Vol.031

湖水地方−スローな時間と色彩鮮やかな自然に触れる

湖水地方の見どころは、水と緑に恵まれた自然もちろん、季節の移ろい、1日の時間の経過によっても印象が変わる多様性にあるだろう。先ごろ公開された映画「ミス・ポター」の影響で、ますます注目が高まっている。今回は定番のピーター・ラビットやワーズワースゆかりの場所のほか、日本ではツアーで企画されることが少ない、新素材や一歩奥のエリアを紹介する。絵本のような牧歌的な景色とともに、荒々しい自然には歴史や文化など、ユニークなテーマがちりばめられている。
(取材協力:英国政府観光庁、ヴァージンアトランティック航空)

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芸術家たちが心を奪われた湖水地方を辿る旅(2007.9.28)
湖水地方の定番観光の一つ、ウィンダミア湖でのクルーズ 船上からはウィンダミア湖畔ののどかな風景が見られる ウィンダミア湖は湖水地方の真ん中に位置し、このエリアで最大と、まさに湖水地方を代表する湖だ もう一つの定番観光がウォーキング。観光客向けの「フットパス」にある、黄色い矢印と「Public Path」と書かれた木の看板を目印に、簡単に楽しめる 典型的な湖水地方の家屋の眺め
牧草の緑が心をなごませてくれる あちこちで、かわいらしい羊がたわむれる マウンテンバイク専用のパスもあるという 「世界で最も美しい村」と呼ばれるグラスミアにはワーズワースが暮らした家がある。ワーズワースはガーデニング好きで、裏庭には自ら選んだ植物を植えたという ピーター・ラビットの故郷、ヒルトップ農場。作者のポターが絵本の印税で初めて購入した場所で、1階にはリビングと応接間、2階には書斎などがある
敷地内には色鮮やかな花々がいっぱい。ポターは結婚前まで、ここで1人暮らしをしていた 遊歩道沿いにも草花がたくさん ヒルトップは現在、ナショナル・トラストの管理下にあり、現在も「農場」としての機能が継続されている 湖水地方では、搾りたての牛乳や農家のチーズ、ハムなど、自然の恵みの食を味わいたい ヒルトップの隣にあるパブ「Tower Bank Arms」もお勧め。常時20種類以上の地ビールをラインナップにそろえる
チェダーチーズも熟成の若いから長いものまで幅広い味わい。フランス産にも負けない豊かな風味に圧倒される 天気が良い日は屋外で、景色と清涼な空気とともに味わいたい 宿泊先も充実。ちょっとユニークなのが「コパー・マインズ・マウンテン・コテージ」 20世紀初頭は銅の採掘所だった場所で、各コテージは労働者たちが残した住居に手を加えたもの。周囲には採掘で使用した道具類も残されている 採掘所の道具類がデザインとして使われているコテージもある
この辺りは湖水地方特有の牧歌的な景色とは異なり、荒々しい雰囲気。山の合間を霞が流れる早朝には、朝もやの中に羊たちが草をはむ姿がみられることも 贅沢な滞在を望む人には、5ツ星の「ギルピン・ロッヂ」もある。アラン・デュカス主宰の「ルレ・デ・シャトー」にも加盟している 客室は全室スイート。宿泊と食事のパッケージで1泊1名150ポンドから 客室のテラスから庭へ レストランはミシュランで1ツ星を獲得
地元産のチーズや野菜、ラム肉をふんだんに使ったフレンチが食べられる 湖水地方の中でも日本人のツアーには、あまり組み込まれていない西部の西カンブリアは、荒々しい山々の、男性的な風景が印象的 スコールフィル山からのながめ。晴天時には哲学者ジョン・ラスキンが「天国の入り口」と称える絶景が広がる。谷間に夕陽がさす時刻はなんともいえない神々しい景色だとか 西カンブリアで一番の観光名所・マンカスター城。13世紀に造られた石造りの城で、800年以上も前からこの地方の領主であったペニトン家の末裔が暮らす 門をくぐるとすぐに高さ3メートルものシャクナゲに目が奪われる。開花時期は5月から7月。ピンクやオレンジ、黄色、白など鮮やかな色彩が広がる
家具や調度品はアンティークばかり。随所に歴史の重みが感じられる 来賓用のダイニングルームは、レセプションホールとして一般開放されており、ここで結婚式の披露宴やパーティの開催も可能 実はマンカスター城は幽霊が出ることでも有名。若くして命を落とした領主の娘の霊がさまよっているという。城内で寝泊りする「ゴーストツアー」もある お城なのに、世界でも珍しいフクロウ専門の飼育施設「ワールド・オウル・センター」があり、世界から集められた30種以上のフクロウが飼育されている 「レイベングラス・アンド・エクスデール鉄道」は保存鉄道。鉄道発祥の国であるイギリスの伝統を未来に残すべく、観光目的に復活させたもの
トロッコに屋根が付いた簡素なものだが、蒸気機関は一人前。屋根のないゴンドラ車両もある プチサイズだが、一等車と二等車に分かれているのもユニーク もくもくと煙を吐きながら深い森の中へ 小川に掛けられた橋を渡ったり、シャクナゲの群生をかすめたり、レンガ造りのトンネルをくぐったり…。約45分の列車の旅でいろんな場面に遭遇する 途中に停留所が4〜5ヶ所ほどあり、ウォーキング途中で乗り込むこともできる