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SNS時代の消費行動、ネットと旅行に接点あり-JATA経営フォーラム

  • 2012年3月8日

 TwitterやFacebookなどのSNSの台頭、インターネットの広がりによる情報氾濫などの要因により、コミュニケーションは大きく変貌を遂げている。旅行業界として、その変化に即した対応をするにはどうすればいいのか。JATA経営フォーラム2012では、他業種ながらマーケティングの最先端で活躍する人々の意見を聞く分科会が開催され、今後の消費行動の展望とともに、旅行業界の可能性が話された。



モデレーター
Visit Finland日本代表 能登重好氏

プレゼンテーター
篠原康弘氏:国土交通省航空局航空ネットワーク部長

パネリスト
インフォバーン代表取締役 小林弘人氏
インテグレート代表取締役CEO 藤田康人氏
日本経済新聞社編集局産業地域研究所主任研究員兼「日経消費ウオッチャー」編集長 藤原弘明氏




インターネットの発展がマーケティングを変えた

インテグレート代表取締役CEO 藤田康人氏

 はじめに、過去5年間の社会的な変化について、パネリストそれぞれの立場から表明があった。

 マーケティングコンサルティングとコミュニケーションプランニングなどを行なう、インテグレート代表取締役CEOの藤田康人氏は、この10年間で情報流通量は500倍にも増加したと説明。メディアも、テレビや雑誌など従来のマスメディアであるPaid Media(ペイド・メディア)に加え、自社のウェブサイトやパンフレット、さらには既存店舗などのOwned Media(オウンド・メディア)、そして今話題のSNSや第三者情報などを示すEarned Media(アーンド・メディア)と多様化したと指摘。消費者は企業が広告費を払うペイド・メディアや自社所有のオウンド・メディアに対して、企業の都合の良いことしか発信していないとの理由で信頼せず、実際の知人やネット上の知人がSNSなどに発信した情報を信頼するようになってきたため、アーンド・メディアの重要性が増していると語る。アーンド・メディアは企業側ではコントロールできないことが大きな特徴で、企業にとっては信用や高い評判を得るメディアだと説明する。

 こういう時代では、広告を打ったからといって、売り上げが伸びるとは限らない。かつてのようにボリューム増=効果増、売り上げ増の相関関係がなくなっている。それは生活者、消費者が自分に興味のないことには情報バリアを張っているためだと、藤田氏は説明する。ただし、「SNSは重要なメディアだが、マスメディアの代替ができるわけではない」とも語り、先にあげた3つのメディアを組み合わせた統合的なマーケティングプランをつくることも重要だという。

 次に、ウェブサイト制作やコンテンツ企画、ITコンサルティングを手掛けるインフォバーン代表取締役の小林弘人氏は、「最近はシェア・共有を元にした商売が伸びている」と語り、旅行に近い例として自分の部屋を、宿泊費を決めて他の人に貸すことができる「AirBnB」をあげた。利用者は、泊まりたい町を検索すると現地で登録されている部屋の条件や写真を見ることができ、同時に旅行中は自分の部屋を貸すこともできる。小林氏は、「シェア型の宿泊サービス」と述べ、今やインターネットを使えば世界のどこでも誰とでも売り買いができると語った。

 最後に日本経済新聞社「日経消費ウオッチャー」編集長の藤原弘明氏は、「この5年間で若者の消費意欲はすべての面で減退した」という。その理由は将来に対する不安で、「今のよりも将来の蓄えに回すと答えた層が4割にのぼった」と話す。しかし「今は潮目を迎えたようだ。昨年の調査では20代の酒離れに歯止めがかかり、外飲み志向の傾向が表れた」という。その理由として「一緒に飲む人と仲を深めたい」「じっくりと話をしたい」などがあげられており、新たな変化が生じている状況を語った。